初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて

こんにちは。障害年金サポート調布の岡部健史です。
寒さも厳しく、新型コロナウイルスが依然として猛威を振るっております。みなさまにおかれましては、感染対策をしっかりととっていらっしゃることと思いますが、寒さによっても体調を崩されませぬようご自愛ください。

本日は、厚生労働省年金局事業管理課長通知「初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」(年管管発0928第6号、平成27年9月28日)についてご説明させていただきます。この通知は、初診日の証明が困難な場合における救済を図る内容となっており非常に重要です。初診日の証明ができずに障害年金の請求手続をあきらめてしまう方が少なくありませんので、そうならないためにもこの通知の内容をしっかりと把握して行使できるようにしておくことが重要です

障害年金の請求において、初診日が非常に重要な意味を持つということは、このコラムでも何度かお話させていただきました。初診日が特定できないことを理由に障害年金が不支給となることもあります。カルテは永久に保存されているわけではありませんので、初診日から何年も経過して障害年金の請求を行う場合などは、カルテ廃棄や廃院などで初診日が証明できないという事態に直面することがあり得るのです。このような場合に、上記の通知を活用することになります。以下、内容について少しご紹介します。

【初診日が一定の期間内にあると確認された場合の初診日確認の取扱いについて】
初診日があると確認された一定の期間が全て国民年金の加入期間のみであるなど同一の公的年金制度の加入期間となっており、かつ、当該期間中のいずれの時点においても、障害年金を支給するための保険料納付要件を満たしている場合は、当該期間中で請求者が申し立てた初診日を認めることができることとする。

これは、初診日を具体的に特定できなくても、
①資料などによって初診日があると思われる一定の期間の始期と終期を特定し、
②その特定した期間のいつの時点においても保険料納付要件を満たしていれば、
請求者が申し立てた初診日を認めることができることとするということを述べています。
一定の期間の始期を特定する資料とは、健康診断や人間ドックの結果(異常所見がなく発病していないことが確認できるものなど)、交通事故が原因の場合は交通事故が原因であることを明らかにする医学的資料と交通事故の時期を証明する書類などが該当しますし、一定の期間の終期を特定する資料とは、2番目以降に受診した医療機関の受診状況等証明書、障害者手帳の交付時期に関する資料などが該当します。

例として、糖尿病から糖尿病性腎症になり、さらに進行して慢性腎不全になった方で、現在は人工透析を受けているAさんで考えてみます。Aさんは、人工透析療法を開始したので、障害年金の請求を考えました(人工透析療法施行中の者は原則として2級)が、人工透析の原因である慢性腎不全と糖尿病とは相当因果関係があることから、慢性腎不全の初診日は糖尿病の初診日と認められることがわかりました。そこで、糖尿病の初診の病院に問い合わせましたが、残念ながらカルテ廃棄により初診日を証明できないと言われてしまいました。Aさんの記憶では、会社の健康診断で指摘されすぐに受診した平成15年9月が初診日であるとのことで、35歳の時とのことです。また、Aさんは大学卒業後の23歳のときから同一の会社に継続して勤めており厚生年金に加入していたとのことで、この会社は毎年9月に健康診断を行っていたとのことです。

一般的に糖尿病の進行は緩やかなことが多く、Aさんのように障害年金を請求しようと考えた時点から、さかのぼって初診日が数十年前にあるということもありえます。当然ながら、時間が経過すればするほど初診日を証明することは難しくなります。ひとつのやり方としては、まずAさんが当時勤めていた会社に連絡を取り、平成15年前後の健康診断結果を入手します。うまく平成14年、15年、16年の健診結果が取得できました。これによると、平成14年については「異常所見なし」、平成15年については「要精密検査」と記載されていました。そして、平成16年の健診結果については、「現在糖尿病治療のためB病院を受診中」の記載がありました。
平成14年の健康診断実施日は9月3日で、「異常所見なし」のため、理論上発病は平成14年9月3日以後と考えられます。発病しなければ初診はありえないため、理論上、初診日があると思われる一定期間の始期は平成14年9月3日となります。また、平成16年の健康診断実施日は9月6日で、「現在糖尿病治療のためB病院を受診中」と記載のあることから、遅くとも平成16年9月6日には受診していることは明らかで、理論上、この日以前に初診日があることになるため、一定の期間の終期は平成16年9月6日となります。
したがって、Aさんの場合、初診日があると思われる一定の期間は平成14年9月3日~平成16年9月6日と特定でき、Aさんはこの期間同一の公的年金制度(厚生年金保険)に加入し、どこを切っても保険料納付要件を満たしていることから、請求者申立ての初診日である平成15年9月が初診日であると認められる可能性が高いといえます。
※日付を特定できない場合は、その月の末日が初診日と認められることになります。

このように、初診日があると思われる一定の期間が特定できれば、初診日を具体的に特定できなくても受給権が認められることがありますので、あきらめずに市役所や年金事務所、専門家にご相談ください。

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