『障害年金制度の周知』について(2)

ゴールデンウイークが終わりました。皆さん、連休はどのように過ごされたのでしょうか。
障害年金サポート調布の福間です。
これからは、伊勢志摩サミットの開催(5月26日27日)、来年予定の消費税の引き上げの行方、衆参同日選挙の有無、そして、トランプ氏は本当にアメリカ大統領になるのか、と政治的な話題が目白押しです。

前回、障害年金について国の広報活動が重要である、ということを書きました。この国の広報活動は、一般公衆を対象とした一般的広報活動と行政窓口における助言等の個別的広報活動に分類できます。前回は、一般公衆を対象とした一般的広報活動について書きましたので、今回は、行政窓口における助言等の個別的広報活動について、特に行政の窓口等で適切な情報提供・教示がなされなかったため受給者が不利益を被ったと判断された事例をみてみたいと思います。

X(昭和35年生まれ)は、平成18年10月30日に障害基礎年金の裁定請求をし、当時の社会保険事務所長から、同年11月29日付けで「国民年金 障害福祉年金裁定通知書」の交付を受け、同年12月21日付けで「国民年金裁定通知書」の交付を受けた。これによると、Xが障害福祉年金の給付を受ける権利を取得した年月日は昭和55年1月31日であり、昭和55年2月から昭和61年3月までの障害福祉年金の給付の支分権は時効消滅し、障害基礎年金の給付を受ける権利を取得したのは昭和61年4月であり、昭和61年4月から平成13年7月までの障害基礎年金の給付の支分権は時効消滅した旨裁定された。

しかし、Xは身体障害三級認定の申請をするため昭和61年12月に医師の診断を受けた際、医師から障害基礎年金の受給資格があるから申請するよう勧められ、昭和62年3月ごろ、関東地方の市役所・国民年金係を訪れ、受付担当職員に対し、障害基礎年金の申請をしたい旨を申し出た。しかし、受付担当職員は、「あなたの障害は20歳前からのもので、年金も納めていないし、あなたの障害の程度では障害者年金は出ません。更に障害が加わって車いすの生活にでもなれば、年金の交付があるかもしれませんが、現時点では無理」との教示をした。この教示を受け、20歳前の発症で年金の掛金を納めていないこと及び自分の障害の程度では年金の交付を受けるのは無理だと誤った認識を抱くに至った。その後、平成18年8月に自分とほぼ同程度の障害者が障害福祉年金又は障害基礎年金を受給しているのを知って、前回とは異なる区役所・年金課を訪れるまで、障害基礎年金裁定請求をすることはなかった。

Xは、市役所の担当職員の受給資格がない旨の誤った教示を受けたことにより、その支分権のかなりの部分が時効消滅により失った損害について国家賠償請求を行った。
1審判決(東京地判・平20.4.18)はそもそも、上記のような誤教示のあった事実自体を認めず、Xの請求を棄却した。
しかし、控訴審判決(東京高判・平22・2・18)は、法制度の内容及び変遷、Xの障害の状況の推移を照らし合わせたうえで、Xの供述が信用できると認めている。そしてその上で、職員としては、「その窓口を閉ざすに等しい対応をしてはならないというべきであって、仮にも、自らの判断により、裁定請求をしても裁定を得られる可能性はないとか、裁定されることは困難であろうとか、あるいは、請求が却下されるであろうとか意見を述べ、教示するなどして、裁定請求の意思に影響を与えて請求意思を翻させたり、請求を断念させたりする結果を招いたり、そのように仕向ける窓口指導等をしてはならず、法令の定める手続に従って裁定の審査を受ける機会を失わせてはならない職務上の注意義務を負う」としてこの職員の対応について不法行為の成立を認め、Xの請求を認容している。

本件では、障害年金の裁定請求先として、市役所・区役所の国民年金係が登場していますが、現在、市役所・区役所で受付出来るのは、障害基礎年金の初診日に国民年金の1号被保険者であった者、20歳前の障害年金に限られています。これ以外の障害基礎年金の初診日に国民年金の3号被保険者であった者、及び障害厚生年金については、年金事務所に相談、裁定請求書を提出することになります。

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