令和3年5月1日より、倉本社会保険労務士の後任として、『障害年金サポート調布』の世話人に就任致しました社会保険労務士の岡部健史と申します。
『障害年金サポート調布』とは、障害年金を通じて社会貢献を行う社会保険労務士のグループであり、障害年金制度の周知を目的として前世話人の倉本社会保険労務士の呼びかけにより発足しました。
障害者地域活動支援センター ドルチェ様のご協力をいただき、毎月障害年金の相談会やセミナーを行い、令和3年の現在、活動は10年目を迎えています。
障害年金制度は複雑であり、複雑が故の難しさやわかりづらさがあると私は感じております。
そのような制度をわかりやすくお伝えすることで、障害年金を必要とする方にお届けするお手伝いをすることを有資格者としての社会的責任のひとつと考えております。
今まで積み上げてきたものをさらに大きくし、なおかつ発展できるようグループ一丸となって取り組んでいく所存です。
なお、前世話人の倉本社会保険労務士には顧問に就任していただき、引き続きご指導を賜ります。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
・顧問:倉本 貴行(社会保険労務士)
・世話人:岡部 健史(社会保険労務士)
・メンバー:竹内 潤也(社会保険労務士)、服部 純奈(社会保険労務士)、福間 善孝(社会保険労務士)、山本 薫(社会保険労務士)、井上 真理子(社会保険労務士)、本間 美穂(社会保険労務士)、豊嶋 真理(社会保険労務士)
新着情報
こんにちは、『障害年金サポート調布』の服部純奈です。
最近では、遅くまで暑い日が多く、「秋ってあったっけ?」と思う年が多かったように思いますが、逆に今年は割と早くから涼しくなり、日によっては「秋を飛ばして冬がきた」と思う天候です。
秋らしく、過ごしやすい気候が恋しい今秋です。
さて、本日は少しドキッとするテーマですが、障害年金を受給するデメリットはあるのか?について取り上げたいと思います。
結論を申し上げますと、
障害年金を受給することによる「大きな」デメリットはありません。
ただし、捉え方によっては障害年金を受給するとデメリットを感じることもありますので、代表例を5つ挙げます。
[主なデメリット]
- 他制度との支給調整される
- 扶養から外れることがある
- 老齢基礎年金の減額の可能性
- 死亡一時金、寡婦年金をもらえない
- 老齢年金の繰下げ受給ができなくなる
簡単に解説して参ります。
他制度との支給調整
障害年金を受け取ると、他の公的制度から支給される手当などが減額・停止されることがあります。
▶傷病手当金
傷病手当金とは、私傷病が原因で就労ができない期間に健康保険制度から支給されます。
同じ傷病が原因の場合は、原則として障害年金(障害厚生年金)が優先され、傷病手当が減額や支給停止となります。
・障害基礎年金のみの場合は、傷病手当金は調整されません
・別の傷病が原因の場合は、傷病手当金と障害年金は両方とも受給できます
▶労災
会社にお勤めの方は、業務上や通勤中の病気やケガなどが理由で労災を受給することがあります。
同じ傷病で障害年金を受給する場合は、障害年金が優先され障害年金は全額支給、労災給付は減額となります。
▶加給年金
障害厚生年金や老齢厚生年金を受給していると、一定条件の配偶者がいると加算される「加給年金」ですが、対象となっている配偶者自身が障害年金を受給することのなった場合は、加給年金が支給停止となります。
▶児童扶養手当(※「児童手当」「特別児童扶養手当」ではありません)
ひとり親家庭などが対象となる児童扶養手当ですが、障害年金を受給している場合はやはりダブルで満額ではなく、障害年金が優先され、児童扶養手当は児童扶養手当の額と障害年金の子の加算部分の額との差額が支給されます。
(障害厚生年金3級の場合は子の加算がないため、3級の金額と児童扶養手当の金額で比較します)
▶生活保護
最後のセーフティーネットと言われる生活保護は、他に収入がある場合は、その分の生活保護費が減額されます。障害年金も実は「収入」とみなされ、基本的には障害年金を受給した金額分だけ生活保護が減額されます。
扶養から外れる可能性
まず、障害年金は非課税であるため「税法上の扶養」とは関係がありません。
一方で、健康保険ではご家族の扶養に入ることもあるかと思いますが、障害年金を受給する方の収入が障害年金を含めて180万円以上になった場合は、扶養から外れてしまいます。
ただし、障害年金の受給のみで180万円以上になるケースは非常に稀ですので、他に収入がない場合はそれほど気にする必要はないかもしれません。
老齢基礎年金の減額の可能性
1、2級の障害年金を受給している場合は、国民年金保険料の支払いの免除を受けることができ、これを「法定免除」といいます。法定免除を申請すると国民年金の保険料を納める必要はなくなりますが、法定免除の期間の老齢基礎年金は、保険料を全額納付していた場合に比べて2分の1で計算されることになります。
つまり、その分だけ65歳以降にもらえる老齢基礎年金の金額は減額されるため、保険料を全額納付した場合に比べると、老齢基礎年金の額は少なくなるというデメリットが生じる可能性があります。
65歳以降もずっと障害年金を受給し続けられる場合はそれほど気にすることはありませんが、更新時に障害年金が支給停止になった場合など、65歳以降は老齢基礎年金を受給するケースも考えられます。
ただし、法定免除の申請は自分で選択することができ、現在は届出を出さない場合は通常どおり全額保険料を納付することが可能ですので、もしもに備えて保険料を納付すると安心材料になるかと思います。
死亡一時金、寡婦年金をもらえない
亡くなった方と生計を同じくしてた遺族に対して支払られる死亡一時金や、遺族年金をもらえない65歳未満の妻に対して60歳~65歳の間に支給される寡婦年金のどちらも、亡くなっ た方が障害基礎年金を受給していた場合は支給されません。
老齢年金の繰下げ受給ができなくなる
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、65歳から受給せずに66歳~75歳までの間で受給の開始を繰り下げ、その期間に応じて増額した年金を受け取ることができますが、65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害年金を受け取る権利があるときは、原則として繰下げ受給の申出ができないため、その点は注意が必要です。
※ただし、「障害基礎」年金のみ受け取る権利のある方は、「老齢厚生」年金については繰下げ受給の申出が可能です。
以上が、代表的なデメリット5つです。
繰り返しになりますが、障害年金を受給することによる「大きな」デメリットはありませんが、場合によってはデメリットと感じることもあるかと思いますので、事前に確認と検討されることをおすすめします。
コラム
2025年11月12日
こんにちは。障害年金サポート調布の岡部健史です。
今回は障害年金のセミナーのご案内を致します。
ご興味ある方は是非ご参加ください。
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内容:「実例から学ぶ障害年金の基礎」 ~社会保険労務士2人のクロストーク~
日時:11月21日(金曜日)10:00~11:30
会場:調布市社会福祉協議会2階
費用:無料
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障害年金の専門家である社会保険労務士が日ごろ行っている障害年金の実務においてポイントとなる点や難しいと思われる点などをトークセッションという形でお話します。なかなか聞くことのできない本音が聞けるかも?
参加のお申し込みは、以下までお願い致します。
【申込先】調布市社会福祉協議会 障がい者支援係
障害者地域活動支援センター ドルチェ
TEL:042-490-6675(直通)受付時間:9:00~17:00
【申込期間】~11月18日まで
※原則として調布市在住の方が対象となります。
※定員35名のため、定員に達し次第受付終了となります。
ご参加をご希望される方は、お早めのお申し込みをお願い致します。
セミナーがお役に立てば、大変うれしく思います。
どうぞよろしくお願い致します。
セミナー&相談会
2025年10月29日
障害年金サポート調布の豊嶋真理です。このところ、障害年金の不支給決定を受けた後にご相談をいただくケースが少なくありません。しかし、その際に「請求書類のコピーを手元に残していない」という方がほとんどです。今回は、障害年金請求書類のコピーを取っておくことの重要性についてお伝えします。
● 不支給になった場合に備えて
障害年金の請求を行った結果、不支給となった場合、その理由を検討するには提出した書類の内容を確認する必要があります。
日本年金機構から送付される不支給通知書には、決定理由や判断の根拠が記載されていますが、それだけでは十分ではありません。請求時の診断書や申立書を含めた書類全体を振り返ることで、今後の方針を立てやすくなります。
また、不服申立て(審査請求)を検討する際には、請求書類の精査が不可欠です。さらに、社労士へ相談される場合もコピーが手元にあれば、より具体的なアドバイスを受けることができます。
● 更新時に備えて
障害年金が有期認定となった場合は、一定期間後に更新手続きが必要です。その際、初回請求時の診断書が手元にあると、前回との比較を通じて現在の状況が適切に反映されているか確認することができます。
特に転院している場合には、更新用診断書の作成を依頼する際に「参考資料」として前回診断書のコピーを添付でき、医師に状況を理解してもらいやすくなります。
障害年金請求に必要な書類は多岐にわたり、提出までに大変な労力を要します。そのため「提出したら終わり」と思いがちですが、万が一の不支給や今後の更新に備えてコピーを残しておくことは大きな安心につながります。
ぜひ提出の際には、書類一式を忘れずにコピーし、将来の備えとして保管されることをお勧めします。
コラム
2025年10月1日
障害年金サポート調布の本間美穂です。
一雨ごとに暑さが少しだけ和らいでいるのを感じますが、秋の気配を感じられる日々が待ち遠しいですね。
令和4年1月1日から障害年金の「眼の障害」の認定基準の一部改正により、視野障害の測定方法は、従来のゴールドマン視野計に加えて、自動視野計による測定結果も認められることになりました。
今回は、視野障害の測定方法による等級の差異についてご説明させていただきます。
下記、参考文献では、障害者手帳の認定基準において、同一症例で両測定を行った結果、等級に乖離のある疾病があることを報告しています。
なお、令和4年1月1日の改定により「目の障害」の障害年金と障害者手帳の認定基準は、ほぼ同じ内容の規定になりました。ただし等級は異なります。
報告の概要は以下の通りです。
①両測定結果において、等級が一致する症例が最も多い
②自動視野計で上位等級となる疾病
糖尿病網膜症、垂直同名半盲
③ゴールドマン視野計で上位等級となる疾病
網膜色素変性、視神経疾患
④等級は一致しないが、どちらの測定方法が優位になるかわからない疾病
緑内障、網脈絡膜黄変疾患
測定方法により、上位等級となる可能性がある疾病による障害であれば、障害年金の診断書作成に当たり、測定方法を指定して医師に測定を依頼することも重要です。
また、測定結果が微妙な場合や④の場合は、両方の測定を依頼し、上位等級となる測定結果で診断書の作成依頼をすることが必要な場合もあります。障害年金の診断書にはどちらか一方の測定結果しか記入することはできません。
また、改正前は、視野障害の障害等級は2級及び手当金だけでしたが、1級、3級の規定が追加されました。
改正前に視野障害で障害等級2級の方は、額改定請求ができる可能性があります。
障害年金の受給は難しいかなと、請求を悩まれている場合は、ぜひ、年金事務所や市役所、社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
【参考文献】
日本視能訓練士協会誌「新視覚障害認定基準におけるゴールドマン型視野計と自動視野計による等級の比較」 金本菜都美
厚生労働行政推進調査事業補助金「見えづらさを来す様々な疾患の障害認定・支援の方法等の確立に向けた研究」分担研究報告書 平塚義宗、鶴岡三惠子、村上晶
コラム
2025年9月17日
皆さまこんにちは。障害年金サポート調布(SSC)の井上真理子です。9月になりましたがまだ秋の気配は感じられず、厳しい残暑が続いていますね。疲れの出やすい時季なので無理をせず十分に休息をとってお過ごしください。
今回は初診日の重要性についてお伝えしたいと思います。
◆障害年金における初診日とは?なぜ重要?
障害年金では、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日を初診日と定義しています。転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日になります。『初診日』に加入していた制度に応じて障害年金を請求し、『初診日』に加入していた制度から年金を受給することになります。
障害年金を受給するための要件は、①初診日において年金制度の被保険者であったか、②初診日の前日において、一定以上保険料を納付していたか、③障害認定日(原則初診日から1年6ヶ月)において障害等級に該当しているか、の3つですが、どの要件も『初診日』を基準に判断されます。
このように、どこに年金を請求するのか、どの制度から年金を受けるのか、年金を受給するための要件の確認・・・障害年金の全てが初診日によって決まるため、初診日はとても重要です。
◆初診日を特定することの難しさ ①相当因果関係
病気Aに罹患し、その後病気Bを発症、病気Bで障害年金を請求したい場合の初診日はどうなるでしょうか。病気Aの初診日でしょうか?それとも病気Bの初診日でしょうか?
病気Aにかからなければ病気Bにならなかった、というように、前の疾病と後の疾病との間に相当因果関係があると認められる場合は、前発の病気Aの初診日が病気Bの初診日になります。
請求書類の中で相当因果関係を主張していくか、それとも否定していくかによって初診日が変わるため、請求先も、受給する年金も、受給要件の確認も、全て変わってきます。このような場合は、どう主張立証していくのかをよく検討する必要があります。
◆初診日を特定することの難しさ ②再発
過去の傷病が治癒した後、再び同じ傷病が発症することがあります。この場合の初診日は、過去の傷病の初診日でしょうか?それとも再発後の初診日でしょうか?
過去の傷病が治癒していたと認められる場合(=再発)は再発後の初診日となります。過去の傷病が治癒していたと認められない場合は、傷病が継続しているとして、過去の傷病と再発後の傷病を同一傷病として取り扱われるため、過去の傷病の初診日が『初診日』になります。
このような場合も、治癒していたと主張するのか、治癒していなかったと主張するのかによって初診日が変わるため、どう主張立証していくのかをよく検討する必要があります。
◆まとめ
障害年金は初診日によって進め方や受給額が大きく変わります。特に複数の傷病がある方や再発している方は、状況を見極め、請求方法や進め方を慎重に決める必要があります。
私たち障害年金サポート調布は、月に1回調布市社会福祉協議会のご協力を得て無料の障害年金相談会を開催し、状況整理のお手伝い、最適なご請求方法や進め方のアドバイスなど、障害年金を必要とする方にお届けするお手伝いをしています。ぜひこちらもご利用ください。
コラム
2025年9月3日
酷暑で疲れがたまる日々ですがいかがお過ごしでしょうか。障害年金サポート調布の山本です。
少し前のことですが、お子さんが就職する予定という方から、お子さんの国民年金保険料について、厚生年金に加入するかがわからないので2~3か月納付しないでいて、厚生年金加入が確実になったら未納分だけを払うことにしたいが大丈夫かと、訊かれたことがありました。
国民年金保険料の納付期限は、法律上は翌月末、4月分であれば5月末(土日等の場合は翌金融機関営業日)となっています。
しかし、実は納付期限の日から2年間納付できることになっており、納付書自体も納付期限の日から2年間使用できます。だからと言って納付期限を無視していると、その度合によっては滞納による処分を受けることがあります。
2~3か月は遅れても大丈夫と考えがちかもしれませんが、老齢年金はともかく、障害年金を考えた時には大丈夫とは言い切れません。障害年金の受給要件には保険料納付要件があり、納付期限に間に合っていないことが致命的に不支給につながることがありえるからです。
年金制度は単なる公租公課というより自分や家族を守る保険ととらえた方がよいのではないかと思います。
厚生年金に加入したか確認する方法ですが、もし健康保険に加入しているなら同じ日に加入しています。社会保険制度では70才未満の方は健康保険と厚生年金に同時に加入します。
勤務先から健康保険資格確認書をもらっていたら資格取得日が書いてあるのですぐにわかりますが、健康保険も厚生年金も資格取得日はマイナポータルで確認できます。それが難しくても勤務先に問い合わせるなど、未納というリスクを伴う手段をとる前にできることがあると思います。
経済的に納付が難しい場合は免除申請もできます。
なお、納付した国民年金保険料が結果的に厚生年金期間の分だった場合は、国民年金保険料は還付されます。
コラム
2025年8月20日
暑中お見舞い申し上げます。障害年金サポート調布の福間です。
厚生労働省の中央最低賃金審議会は、8月4日(月)に今年度の最低賃金の目安を全国加重平均で時給1,118円とすることで決着しました。現在より63円(時給)の引き上げで,伸び率は6.0%となります。
今回は、この決定した最低賃金が、「社会保険加入による年収106万円の壁」にどのような影響を与えるかについて考えてみたいと思います。
まず、問題は、社会保険に加入して働いている労働者の配偶者がパート勤務で働く場合、一定の収入を超えると扶養から外れて、社会保険料の負担が増えることで手取りが減少することです。いわゆる年収の壁(社会保険版)、106万円の壁が存在し、『働き控え』が発生することです。
改めて、社会保険加入の原則要件を確認すると
社会保険の加入義務が生じるのは次の2つの要件を満たす労働者です。
① 労働時間
1週の所定労働時間が一般社員の4分の3以上
② 労働日数
1月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上
しかし、社会保険加入要件には特例があり、『働き控え』、106万円の壁はこの特例制度です。
『特定適用事業所』に勤務する労働者について、次の要件を満たす労働者は社会保険に加入する義務があります。
① 週の所定労働時間が20時間以上であること
② 所定内賃金が月額88,000円(年間106万円)以上であること
③ 学生でないこと
④ 2か月間以上雇用されること
この『特定適用事業所』の要件の規模要件は、現在は、51名以上となっており、今後規模要件の縮小(適用事業所の拡大)が決まっています。また、今年6月に年金制度改革法が成立して、この②賃金要件は撤廃が決定しましたが、施行時期は未定となっています。
今回の全国加重平均:時給1,118円で週20時間働いた場合の賃金を計算してみます。
年間:1,118円×20時間×52週間=1,162,720円 > 1,060,000円
月額:1,164,720円÷12月=96,893円 > 88,333円
今回の全国加重平均:時給1,118円では、所定内賃金88,000円(要件②)を超えて社会保険加入の義務が生じることになります。
各都道府県は、国の審議会の示した目安を踏まえて審議会を開き、都道府県ごとの最低賃金を決定することになっています。新聞の報道によると全ての都道府県で最低賃金が1,000円を超える見込みであるとのことです。私の試算ですと、都道府県別の最低賃金は1,015円程度となるようです。仮にこの賃金額で、週20時間働いた場合の賃金を計算すると次の通りです。
年間:1,015円×20時間×52週間=1,055,600円 < 1,060,000円
月額:1,055,600円÷12月=87,966円 < 88,333円
全国の最低賃金では、所定内賃金88,000円(要件②)に若干届かないことになります。
最低賃金上昇の影響
使用者側は、今回の最低賃金が6%上昇することによって、社会保険加入の義務が課され、それにより、社会保険料の事業者負担分(厚生年金9.15%,健康保険5.75%程度合計15%程度)が新たに加算されることになります。賃上げ余力の乏しい中小事業者にとっては厳しい経営課題となる(日本商工会議所)。人件費高騰の価格への転嫁や生産性向上を図る必要があります。
労働者側では、更に働き控えが加速するように思われます。
労働者としてのひとつの考え方
標準報酬月額88,00円の労働者負担の厚生年金保険料は、8,052円、健康保険料(東京都・40歳以上)は、5,060円です。国民年金保険料は、17,510円です。
厚生年金保険料は、事業主と労働者との折半なので、国民年金保険料の半分以下です。
上記の保険料は、国民年金第3号被保険者には納める必要のない保険料です。
国民年金第3号被保険者から厚生年金の被保険者となる労働者(特に60歳以上の労働者)は、厚生年金を払うことによって、報酬比例部分が増えることは当然ですが、厚生年金保険料には定額部分(経過的加算)の加算もあることも考慮すべきです。
経過的加算は上限480か月ですが、この上限月数での誤解が「国民年金との合計で480か月になるまで」というものです。実際は、国民年金の加入期間は無関係で、厚生年金加入部分が480か月になるまで経過的加算は増えます。
国民年金第3号被保険者期間の長い方は、厚生年金加入期間が長くなることで報酬比例部分だけでなく、この経過的加算の恩恵を享受することができます。
結果として、国民年金の満額以上の額を厚生年金の経過的加算で受給することも可能となります。
コラム
2025年8月6日
こんにちは、『障害年金サポート調布』の服部純奈です。
実は、5月が終わる頃まで「今年は結構、涼しいんじゃないか…??」と思っていましたが、やはり暑くなりましたね…。
ある意味期待通りでした。
さて、今回は障害の程度が軽くなった場合について取り上げます。
障害年金を受給されている方の中でも、劇的に症状が回復し、障害の程度に該当しない程度になることがあります。
その場合、どうしたら良いのしょうか?
パターンは2つ考えられます。
①次の更新の時期までそのまま受給を続ける
体の状態が(年金上の)障害状態に該当する否かを判断して決めるのは、実際のところ医師作成の診断書を年金機構に提出して判断していただくというのが本来の手順かと思います。
そのタイミングは、「次の更新」ということになります。
(中には、更新のない「永久認定」もありますが、永久認定されている方が障害状態に該当しない程度に回復することは考えにくいかと思います)
本人としては「治った!」と思っていても、揺り戻しがないとは言い切れません。
状態の様子見、リハビリの意味合いも含めて、次の更新までの期間はそのまま受給を続ける、
という方がほとんどです。
②「障害不該当届」を提出する
自動車運転免許で例えると「自主返納」に意味合いは近いと思いますが、
実は「障害給付受給権者 障害不該当届」という届出が存在します。
基礎年金番号(またはマイナンバー)、生年月日、障害等級に該当する障害状態でなくなった年月日 などを記入し、年金事務所に提出します。
私どもの肌感覚としては、ほとんど①です。
②を届け出た方には、今のところ出会ったことがありません。
色々が考え方もあると思いますので、晴れて快復されたという場合は参考にしていただき、ご自身にとってより良き方向をご検討ください。
コラム
2025年7月11日
こんにちは。障害年金サポート調布の岡部健史です。
本日は、障害認定日の特例についてご説明いたします。
障害年金は、一定以上の保険料の支払等を行っており、保険料納付要件を満たしているばあいに、原則として初診日から1年6か月経過した日において、国民年金法又は厚生年金保険法に定める障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに支給されることになります。この「初診日から1年6か月経過した日」のことを障害認定日といいます。
先述のとおり、原則として障害認定日は初診日から1年6か月経過した日ですが、初診日から1年6か月経過する前にその傷病が治った場合(医師が症状固定と認めた場合の症状固定日を含みます)は、その治った日(症状固定日)を障害認定日とすることができる特例があります。すなわち、医師が症状固定と認めた場合などは障害認定日を、初診日から1年6か月経過した日より早めることができることがあるということです。障害認定日とは、その時点の障害の状態で障害の程度(等級)を認定する日のことを言いますので、等級に該当した場合は、障害認定日に権利が発生することとなります。つまり、障害認定日の特例によって障害の程度を認定する日が早まれば、認められた際に年金の支給も早く受けられるということになります。
障害認定日の特例に該当するものを一部例示すると次になります。いずれも初診日から1年6か月経過する日前に治った(症状が固定した)場合に限ります。(※初診日から1年6か月経過する日前に特例の状態に該当しなければ、障害認定日は原則の初診日から1年6か月経過した日となります。)
①人工骨頭、人工関節を挿入置換した場合は、挿入置換した日
②脳血管障害による機能障害の場合は、初診日から6か月経過した日以後に医師が症状固定と認めた日
③人工弁、心臓ペースメーカー、植え込み型除細動器(ICD)の装着の場合は、装着した日
④人工透析療法を受けている場合は、透析開始日から起算して3か月を経過した日
⑤切断又は離断による肢体障害の場合は、切断又は離断した日(障害手当金の場合は創面治癒日)
例えば、脳梗塞が起こり、左半身に麻痺が残り、なおかつ高次脳機能障害も併発した場合を考えてみます。この場合、左半身の麻痺については初診日から6か月経過した日以後に医師が症状固定と認めた場合はその日が障害認定日(上記②参照)となり、その日以後3か月以内の状態を診断書に記載して障害年金を請求することになります。
ここで注意することがあります。脳血管障害による機能障害の場合は障害認定日の特例に該当するのですが、精神の障害である高次脳機能障害については障害認定日の特例に該当しないため、高次脳機能障害の障害認定日はあくまでも初診日から1年6か月経過した日となります。したがって、障害の状態に着目して障害認定日の特例に該当するか否かを判断して手続きを進める必要があります。
この例の場合は、理論的に、肢体の機能障害については障害認定日の特例で請求を行い、初診日から1年6か月経過した時点で高次脳機能障害の診断書を添付して額改定請求を行うことになります。
難しい点になりますので、是非年金事務所や専門家にご相談ください。
コラム
2025年6月25日
障害年金サポート調布の豊嶋真理です。この6月に刑法が改正されます。「懲役」と「禁固」が廃止され、「拘禁刑」が創設されることを御存じでしょうか。これは、明治40年の刑法制定以来、初めて刑罰の種類が変更される大きな改正です。刑法の改正に伴い、年金法における罰則規定も「拘禁刑」に変更されますので、今回はその概要をご紹介します。
●拘禁刑とは
「懲役」は、刑事施設に拘束して所定の作業を行わせることであり、作業が刑の本質的要素でした。一方、「禁固」は刑事施設に拘置することが目的であり、作業は義務づけられていませんでした。
今回創設される「拘禁刑」は個々の受刑者の特性に応じて、改善更生、再犯防止のために必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことを可能とする刑罰です。つまり、受刑者に対して、必要性に応じた作業を実施し、作業と指導を柔軟かつ適切に組み合わせて、効果的に改善更生を図る刑罰といえます。
●年金法の罰則
例えば、国民年金法第111条は「偽りその他不正な手段により給付を受けた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。」と規定していますが、これが今年の6月1日から「偽りその他不正な手段により給付を受けた者は、三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法による。」に代わります。これは、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和四年法律第六十八号)によって、国民年金法、厚生年金保険法のそれぞれの改正について定められています。
年金法では不正受給に関する罰則、虚偽の届出等に関する罰則などが設けられています。年金を請求する際は、当然のことながら、不正受給に関与することなく、誠実に、事実に基づいた請求をしなければなりません。既に年金を受給している方、これから請求する方、いずれの方にも年金法に罰則があり、不正に関与した場合は、「拘禁刑」が適用される可能性があることを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。
【参考】法務省:拘禁刑下の矯正処遇等について
コラム
2025年5月28日
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