神経症圏・人格障害で認められた精神疾患の事例

みなさまこんにちは。
障害年金サポート調布の倉本貴行です。

今回は神経症圏・人格障害として認められなかった精神疾患が、不服申立で認められた事例の紹介です。
障害年金を請求した際の判断資料として「障害認定基準」というものが用意されており、これで障害年金の受給の可否が決まります。第8節/精神の障害の個所には次のように書かれています。
1,人格障害は、原則として認定の対象にならない。
2,神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて扱う。

今回の事例は、初診日から1年6か月経過した障害認定日現在の傷病名を「境界性情緒不安定パーソナリティ障害」(診断書の備考欄に「精神病の病態を呈している」との記述あり)、請求日現在の傷病名を「解離性転換性障害」として請求しました。前者の「境界性情緒不安定パーソナリティ障害」は人格障害、後者の「解離性転換性障害は神経症のカテゴリーに属すものです。
結果は、いずれも不支給でした。
理由を調べたら、障害認定日は「精神病態は一過性でF6(人格障害)が主」、請求日は「主治医の診断はF4(神経症圏)である」とのことでした。
不服申し立ての第1弾としての審査請求に進み、障害認定日当時の主治医には「本事案は一過性ではなく精神病態を呈している」旨の意見書を作成していただき、請求日当時の主治医には改めて当時のカルテを見直してもらい「統合失調症」の傷病名で新たに診断書の作成をしていただきました。
その後、保険者側から、障害認定日及び請求日当時の夫々のカルテの写しの提出依頼があり、口頭意見陳述を経ての結果は「棄却」でした。なお、口頭意見陳述というのは、社会保険審査官に対して質問をしたり、その返答に対して意見を述べたりする場です。
次いで、第2弾であり、かつ最終審査である社会保険審査会への再審査請求へ進みましたが、公開審理が開催される直前に「処分変更」が行われた旨の連絡が、保険者である厚生労働省の事務方からありました。
処分変更というのは、保険者が公開審理の直前に改めて処分内容を見直して、処分に無理があると判断した際に、その処分を取消し、請求者の主張を認めるものです。
今回の事例でいえば、たとえ傷病名が神経症圏や人格障害に属していても、実態が判断されたということです。
冒頭に掲げた障害認定基準の文言はいずれも「原則として」と書かれています。「原則として」ということは、当然に「例外」があるということです。

どうぞ諦めないでください。
今回の事例も一般の方の請求であれば、不服申立てにまで進むかどうかは聊か疑問に思われます。
障害年金の請求について、少しでもおかしいとか、分からないといったことがあれば、年金事務所や市役所の国民年金係、我々社会保険労務士に相談されることをお薦めいたします。

コラム

« »