社会的治癒2
みなさまこんにちは。
障害年金サポート調布の倉本貴行です。
今回は社会的治癒の事例を紹介いたします。
社会的治癒については平成25年4月に本コラムに一度書きましたが、意味するところは障害年金を請求するに際して、その傷病が医学的には治癒したとは言えないが、その症状が消えて社会復帰が可能となり、かつ、治療投薬を要せず、外見上治癒したと見えるような状態がある程度の期間にわたって継続するということであり、障害年金の請求に際してこれを治癒に準じて取り扱っています。
なぜこのようなものがあるかと言えば、社会的治癒が認められた場合は、その期間の後に最初に医師に診てもらった日が初診日となるからです。
ご相談があったのは40歳台の男性で、精神疾患をお持ちの方です。
初めて病院に行ったのが平成17年8月で当時は厚生年金に加入していました。
ただし、一定の保険料を納付していなかったので、年金事務所では「納付要件を満たしていないので請求できません。」と言われました。
その後たまたま私にご相談があり詳しく話を聞いてみると、平成17年8月から21年6月までは継続して受診されていましたが医師と相談の結果経過観察に入り、その後平成24年8月に再度不調になり改めて受診をした方です。
そこで平成21年6月から24年7月までの3年2か月を社会的治癒期間として主張し、平成24年8月を初診日として請求をしました。
平成24年8月が初診日となると保険料の納付要件を満たします。
社会的治癒を主張する期間としては極めて短い期間でした。
結果はある程度予想はしていましたが、「請求のあった傷病の初診日は平成17年8月であり納付要件未充足のため不支給」の決定通知が来ました。
そこで当方の主張する社会的治癒期間を証明するために次のような書類を集めて不服申立てを行いました。
・当該期間中は厚生年金に加入しておりその間の詳細な就労状況
・当時勤務先では大きなプロジェクトを推進しており、そのリーダーとして中心的役割を担っていたという社内の資料及び当時のビジネス雑誌のインタビュー記事
・法律行為を行うことができるという当事者能力を証明するための当該期間中における不動産の売買契約書及びローン契約書
その結果審査請求では認められませんでしたが、再審査請求で認められました。
裁決書(再審査請求による社会保険審査会からの決定文書)からの一部抜粋です。
「請求人は、上記の期間(筆者注:当方が主張した社会的治癒期間)において、徒歩及び電車を利用して約1時間20分かけて通勤し、Aプロジェクトの責任者としてその取りまとめに従事しており、他の社員同様問題なく仕事をこなし、その間の勤務状況、勤務内容、通勤状況等は、他の社員と何ら変わることなく就労ができており問題なく生活していたとされているのであり、厚生年金保険の被保険者資格も継続し、この間に昇給もしていることがうかがえるのであるから、これらの状況を総合的に判断すると、平成21年6月から平成24年7月までの間において、当該傷病はいわゆる社会的治癒の状態にあったと認めるのが相当である。」
最初に相談をいただいてから約2年かかりましたが、ご本人の喜びは大変大きなものがありました。
障害年金の請求は当たり前のことではありますが一般の方でも当然にできます。情報も巷間に溢れています。
インターネットで検索すれば玉石混淆ではありますが山ほどの情報があります。
しかしながら、残念ではありますが、一般の方が手続きをするにはなかなか難しいのも事実です。
一生の間に、ほとんどの方は障害年金の請求をする機会はないと言っていいと思います。
しかし誰でもが可能性があります。
ないに越したことはないのですが、もしそのような場面に遭遇して少しでも不安に思われたらどうぞ私たちにご相談ください。
お待ちしております。
2017年1月18日