脳梗塞での障害年金請求について
ご覧いただきありがとうございます。障害年金サポート調布の岡部です。
先日、私の叔父が脳梗塞を発症しました。前日までは普通に過ごしており、就寝し、朝起きたときに体が動かなかったとのことです。右半身に麻痺が残っているため現在は入院して生活しており、リハビリに専念すべくリハビリ専門の病院への転院の手続を行っているところです。リハビリで改善することを願います。
本日は、脳梗塞での障害年金の請求について考えます。
①障害基礎年金の対象となるか障害厚生年金の対象となるか
障害年金には、国民年金制度による障害基礎年金と厚生年金保険制度による障害厚生年金の2種類があり、どちらの対象となるかは初診日で判断することとなります。原則として、初診日の時点において国民年金の加入者(被保険者)は障害基礎年金の対象となりますし、厚生年金の加入者(被保険者)は障害厚生年金の対象となります。
②原則としての障害年金の請求
障害基礎年金・障害厚生年金ともに、原則として、初診日から1年6か月経過した日を「障害認定日」といい、「障害認定日」から後3か月以内の症状を診断書に記載してもらい提出することとなります。したがって、原則として、初診日から1年6か月経過日の症状で年金受給の可否が判断されるということであり、1年6か月経過していないと、障害年金の手続き自体が行えないということになります。これは、原則としてすべての傷病について当てはまります。
③脳梗塞で体に麻痺が残った場合の障害年金請求
②でご説明した通り、障害年金は、原則として初診日から1年6か月経過しないと請求手続きが行えないのですが、脳梗塞で体に麻痺が残ったような場合は、「障害認定日の特例」に該当する可能性があります。具体的には、脳梗塞(脳血管疾患)で肢体に麻痺が残った場合であって、初診日から6か月経過した日以後、医師が症状固定と認めた場合には、医師が認めた症状固定日を「障害認定日」として障害年金の請求を行うことができるというものです。
したがて、初診日から6か月経過するまでは待たないといけませんが、6か月経過した日から原則の1年6か月が経過する日までの間で、医師が症状固定と認めれば、症状固定日時点の診断書を記載してもらうことで、1年6か月の経過を待たずに請求手続きが可能となるということです。ただし、日本年金機構や共済組合等の判断によって特例の障害認定日が認められないこともございます。認められた場合は、原則よりも早く年金がもらえることとなりますので、有利な特例となります。上記は脳血管疾患の肢体麻痺での例ですが、障害認定日の特例はいくつかあり、それぞれ条件が異なりますので、ご興味ある方は専門家等へご相談ください。
④脳梗塞で高次脳機能障害になった場合の障害年金請求
脳梗塞で高次脳機能障害になった場合ももちろん障害年金の請求手続きは行えます。しかし、肢体の麻痺のように「障害認定日の特例」には該当しませんので、高次脳機能障害の場合は、初診日から1年6か月経過しないと請求手続きを行うことができません。
⑤脳梗塞で肢体の麻痺と高次脳機能障害の両方が発生した場合の障害年金請求
脳梗塞で肢体の麻痺と高次脳機能障害の両方が発生した場合は、請求手続きが複雑になり、次の(ア)又は(イ)のようになります。
(ア)肢体麻痺の症状固定がない場合
初診日から1年6か月経過した日の症状をもとに、肢体の診断書・高次脳機能障害による精神の診断書を取得して請求手続きを行います。
(イ)肢体麻痺の症状固定がある場合
③で説明した通り、障害認定日の特例に該当する可能性があります。しかし、高次脳機能障害に特例は適用されませんので、まず肢体麻痺の症状固定日の症状をもとに肢体の診断書を取得して請求手続きを行います。
次に、高次脳機能障害の症状をもとに精神の診断書を取得して「額改定請求」を行います。「額改定請求」とは、等級をあげてもらうことを求める請求手続きです。肢体麻痺と高次脳機能障害は原因を同じくするひとつの傷病として取り扱いますので、「額改定請求」という方法をとります。
額改定請求にはひとつ重要な注意点があり、原則として厚生労働大臣の診査から1年経過しないと行うことができません。例として、初診日から8か月後に医師から症状固定の判断が得られ、肢体の麻痺で請求手続きを行って(厚生労働大臣の診査の結果)年金が認められた場合、そこから1年経過しないと高次脳機能障害による額改定請求は行えないということになります。
ただし、肢体の麻痺で1級の障害年金が認められた場合は、それより上位の等級はありませんので、額改定請求を行う必要はありません。
年金の総受給額が異なることもある非常に難しい判断が必要となりますので、このような場合は、是非専門家にご相談ください。
⑥初診日要件について
私の叔父は、脳梗塞により右半身が麻痺している状態ですので、症状的には障害等級1級に該当する程度と思われますが、残念ながら障害年金の対象とはなりませんでした。それは、「初診日要件」が理由となります。「初診日要件」は、次のとおりです。
(ア)障害基礎年金の場合
初診日において国民年金の被保険者であること又は20歳未満あるいは日本に住所を有する65歳未満であること
(イ)障害厚生年金の場合
初診日において厚生年金の被保険者であること
私の叔父は、発症時70歳で年金制度の被保険者でなかったため、初診日要件には該当せずに、残念ながら障害年金の対象とならないということになります。
障害年金の受給には、年齢なども関係することに注意が必要です。
叔父は65歳まで働いていたので、自由に余生を楽しむためにもリハビリで改善することを心から願っています。
以上が脳梗塞での障害年金請求に関する重要な注意点となります。
実際に障害年金が認められるためには、保険料納付要件という一定以上保険料を支払っていた条件や障害の程度が等級に該当するかといった条件、作成しなければならない書類などもございますので、詳細については是非専門家等にご相談ください。
2024年10月16日