『障害厚生年金の支給調整』について(3)

新しい年も二か月が過ぎて、弥生・3月となりました。皆さんお元気でしょうか、障害年金サポート調布の福間です。

今回は、障害厚生年金を受給した場合の他の所得補償制度との支給調整についての3回目です。業務上の病気・けがの場合の支給調整(労働者災害補償保険法による給付と障害年金)について書いてみたいと思います。

労働者災害補償保険法(以下、「労災法」)の目的は次のように定義されています。「業務上の事由又は、通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。」

労災は、業務上の事由と通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等について支給される所得補償の制度です。一方、社会保険(国民年金、厚生年金保険)の年金給付は、その支給事由となる傷病について業務上外を問わないため、業務災害又は通勤災害によって負傷、疾病、障害死亡した場合には、同一の事由により、社会保険と労災法の両制度から二重に損害のてん補が行われることがある。
このような場合には、社会保険の側の保険給付は全額支給され、労災保険の側の保険給付のみが減額調整されることになっています。

それは、両制度から二重に年金が支給されると、受け取る年金額の合計が、被災前に支給されていた賃金よりも高額になってしまうこと、また、保険料負担について、厚生年金保険は被保険者と事業主とが折半で、労災保険は事業主が全額負担していることから、事業主の二重負担の問題が生じてしまうためとされています。

以下に、労災側の支給対象となる項目別に、a.障害基礎年金と障害厚生年金が支給される場合、b.障害厚生年金のみが支給される場合、c.障害基礎年金(国民年金)のみが支給される場合に分けて、労災側の減額率を記載します。(厚生年金保険、国民年金のa、b、cは全額支給されて減額はありません)

労災側の支給調整の対象給付
1.休業(補償)給付
休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給される。休業給付は、労働者が通勤による負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給される。その支給額は、休業補償給付の場合と同様である。そのため、(補償)と表示する。
a:0.73、b:0.86、c:0.88

2.傷病(補償)年金
傷病補償年金は、業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養開始後1年6ヵ月を経過した日について、①当該負傷又は疾病が治っていないこと、②当該負傷又は疾病による程度が厚労省令で定める傷病等級に該当することのいずれにも該当することとなったとき、その状態が継続している間、支給される。
a:0.73、b:0.86、c:0.88

3.障害(補償)年金
障害補償給付は、労働者の業務上の傷病が治ゆしたときに身体に一定の障害が残った場合に、その労働能力の喪失をてん補するために、その障害の程度に応じて支給される。
a:0.73、b:0.83、c:0.88

4.遺族(補償)年金
業務上の事由により死亡した労働者の遺族が被った被扶養利益の損失をてん補することを目的として遺族補償給付が支給される。遺族補償給付は、原則として遺族補償年金が支給され、当該年金を受けることができる遺族がいない等の場合には、遺族補償一時金が支給される。
今回は、この遺族(補償)年金との支給調整については言及しません。

この減額に当たっては、調整された労災年金の額と厚生年金保険の額の合計が、調整前の労災年金の額より低くならないよう考慮されています。また、労災保険の一時金給付については、同一の事由について社会保険の保険給付が支給される場合であっても減額調整は行われない。労災保険の特別支給金は、減額調整の対象とならない等の規定があります。

また、20歳前の傷病による障害基礎年金のみに適用される規定があります。労災法による年金給付を受けることができるときは、その該当する期間、その支給が停止されます。

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