行政不服審査法の改正

桜の季節が終わったにもかかわらず、季節はずれの寒さが到来していますが、皆様お元気でしょうか。
障害年金サポート調布の福間です。
今回は、行政不服審査法の改正に伴う、障害年金(社会保険関係)の不服審査について書いてみたいと思います。

昨年、平成26年6月6日に成立し、6月13日に公布された、①行政不服審査法、②行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」と呼びます)、③行政手続きの一部を改正する法律の3件の法律があります。

①行政不服審査法は、昭和37年制定以来52年ぶりに改正が行われました。改正の理念は、公正性の向上、使いやすさの向上、国民の救済手段の充実・拡大にあるとされています。具体的には、審査官、審査会の制度を廃止して、新たに審理員による審査手続きの導入、第三者機関(行政不服審査会等)への諮問手続きの導入、審査請求期間の延長、標準審理期間の設定等による迅速な審理の確保、不服申立前置の見直し等が新法の大きな特徴となっています。
行政不服審査法は、原則として全ての法令に基づく処分についての根拠法であり、これらに共通して適用される手続きを定めています。しかし、個別の分野においてより慎重な手続きが求められる場合に、処分の特殊性等を踏まえて審理手続等の一部について、行政不服審査法の特例が定められています。

②整備法は、361件の個別法について、用語の整理や行政不服審査法と同様の規定の整備を行うなど、行政不服審査法の改正と一体的に手続保証水準を確保しつつ、個別法の趣旨に照らして必要な整備を行ったとされています。

国民年金法、厚生年金保険法は、②整備法において、次の改正が行われます。

1.審査請求期間の延長
処分があったことを知った日の翌日から3カ月以内(現在は60日以内)

2.再審査請求期間の改正
a)被保険者の資格、標準報酬又は、保険給付に関する処分
  審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から2ヶ月以内(現在は60日以内)
b)保険料に関する処分
  審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から3ヶ月以内(現在は60日以内)
c)審査請求をした日から2カ月以内に決定がない場合、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなす。(現在は、60日以内に決定がないときは、棄却したものとみなして、社会保険審査会に対して再審査請求することができる)

3. 処分の取消しの訴えは、社会保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。(現在は、社会保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない)

4. 標準審理期間の設定(新設)
(審理の遅延を防ぎ、審査請求人の権利利益の救済を図る観点から、審理期間の目安となるものとして)審査請求から決済まで通常要すべき標準的な期間をあらかじめ定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、地方厚生局における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

施行の時期について、③行政手続きの一部を改正する法律は、平成27年4月1日から施行されています。②整備法は、①行政不服審査法の施行と同日とされており、公布から2年以内とされています。今回の改正は自治体も含んだ大規模な改正となるため、現在、有力視されているのは、28年4月1日で、6月にずれ込むことも予想されているようです。

最後に、国に対する不服申し立ての件数はどのくらいあるのでしょうか。少し古いデータなのですが、平成23年の統計数値をご紹介いたします。
国に対する審査請求総数17,358件のうち、社会保険関係(国民年金法、厚生年金保険法、健康保険法、船員保険法)9,306件(53.6%)、国税通則法4,246件(24.5%)、労働者災害保険法1,861件(10.7%)、その他1,945件(11.2%)。
国に対する再審査請求総数2,927件のうち、社会保険関係2,084件(71.2%)、労働者災害保険法628件(21.5%)、生活保護法94件(3.2%)その他121件(4.1%)です。
やはり、社会保険関係(国民年金法、厚生年金保険法、健康保険法、船員保険法)の不服申立ての件数が断トツで1位となっています。

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