『民法改正と国民年金法への影響』について

暑中お見舞い申し上げます。皆さんお元気でしょうか、障害年金サポート調布の福間です。

「民法の一部を改正する法律」(法律第44号)と「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(法律第45号)が5月26日の参議院法会議で可決、成立し、6月2日に交付されました。
『年金との絡みでは整備法において国民年金法と厚生年金保険法等の改正を行い、年金受給権(基本権と支分権)の消滅時効にかかる起算点を明記した。この改正によって行政実務上の取扱いに変更はない』(「週刊年金実務」NO.2247、平成29年6月12日)、とされています。

今回は、消滅時効、基本権及び支分権について言葉の整理と整備法の条文(国民年金法第102条)についてみていきたいと思います。厚生年金保険法は第92条で時効を規定していますが、改正の趣旨は同一ですので、今回は割愛します。

まず、消滅時効とは、ある事実が一定の期間継続した場合に、事実に即した権利の消滅を認める制度です。

■基本権について
年金を受ける権利は、権利が発生してから5年を経過したときは、時効によって消滅する(国民年金法第102条第一項、厚生年金保険法第92条第一項)。但し、やむを得ない事情により、時効完成前に請求することができなかった場合は、その理由を書面で申立てることにより、基本権を消滅させない(基本権の時効を援用しない)取扱いを行うことがあります。
基本権の消滅時効の起算日は、受給発生日の翌日です。

■支分権について
受給権が発生した年金の支給を受ける権利を支分権と呼びます。平成19年7月6日施行の年金時効特例法の施行日前と施行後(平成19年7月7日以降)では、その取扱いが異なります。
平成19年7月6日以前に受給権が発生した年金は、原則5年を経過したときに時効により消滅します。但し、年金記録の訂正がなされた上で裁定が行われた場合は、支分権が消滅している場合であっても、全額が支給となります(年金時効特例法による取扱い)。
平成19年7月7日以降に受給権が発生した年金は、5年を経過しても自動的に消滅せず、国が個別に時効を援用することによって、時効消滅することに制度変更となりました。
次の1.又は2.に該当する場合は、国は援用しないこととしています。
1.年金記録の訂正がなされた上で裁定(裁定の訂正を含む)が行われたもの
2.時効援用しない事務処理誤りと認定されたもの
支分権の消滅時効の起算日は、支払期月の翌月初日です。

現行の民法では、消滅時効の「中断」と「停止」が定められています。
消滅時効の中断とは、時効の進行中にそれを覆す事情が発生した場合に、時効期間を断ち切って振出しに戻す制度のことを言います。消滅時効の停止とは、権利者の権利行使が不可能または著しく困難であるような一定の事情があるとき、その期間だけ時効期間に算入しない制度を言います。
今回の民法改正によって、これらの用語が変更となりました。時効の中断は時効の更新、時効の停止は完成猶予にそれぞれ変更となりました。

最後に、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の国民年金法第102条です。アンダーラインの個所が今回改正される箇所です。

第102条:年金給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から5年を経過したとき、当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以降に到来する当該年金給付の支給に係る第18条第3項本文に規定する支払期月の翌月の初日から5年を経過したときは、時効によって消滅する。
2 (略)
3 第一項に規定する年金給付を受ける権利又は当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる年金給付の支給を受ける権利については、会計法(昭和22年法律第35号)第31条の規定を適用しない。
4 保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び死亡一時金を受ける権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅する。
5 保険料その他この法律による徴収金についての第96条第一項の規定による督促は、時効の更新の効力を有する。

コラム

« »