『民法改正による厚生年金保険法改正と労働基準法への影響』について
皆さんお元気でしょうか、障害年金サポート調布の福間です。
初めに、前回書いていなかった厚生年金保険法の条文です。
下記が、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」により改正される厚生年金保険法第92条、アンダーラインの個所が今回改正される箇所です。
第92条:保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したとき、保険給付を受ける権利は、その支給すべき事由が生じた日から五年を経過したとき、当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利は、当該日の属する月の翌月以降に到来する当該保険給付の支給に係る第三十六条第三項本文に規定する支払期月の翌月の初日から5年を経過したときは、時効によって消滅する。
2 (略)
3 保険料その他この法律の規定による徴収金の納入の告知又は第八十六条第一項の規定による督促は、時効の更新の効力を有する。
4 第一項に規定する保険給付を受ける権利又は当該権利に基づき支払期月ごとに支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利については、会計法(昭和22年法律第35号)第三十一条の規定を適用しない。
次に今回のテーマです。
平成29年7月12日厚生労働省の労働政策審議会において、労働基準法15条(時効)の見直しの議論が始まりました。
現行法では次の通り規定されています。労働基準法115条(抄)『この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合において、時効により消滅する。』
これに対して、民法の一部を改正する法律(平成29年6月27日公布)では次の通り規定されることとなりました。
社会経済情勢の変化に鑑み、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備、法定利率を変動させる規定の新設等を行うもの。消滅時効については、
1. 民法における職業別の短期消滅時効(1年の消滅時効とされる「月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権」も含む)を廃止し、
2. 一般債権については、
〇債権者が権利を行使することができることを知った日から5年間行使しないとき(主観的時効)
〇権利を行使することができる時から10年間行使しないとき(客観的時効)
に時効によって消滅することと整理されました。
つまり、現行の民法は、賃金の請求権については時効を1年間と規定しているが、現行労働基準法は「1年は労働者にとって短すぎる」との労働者保護の観点から、賃金の請求権の時効を「2年」とする規定となっています。年次有給休暇の時効の2年もここに根拠があります。
今回の民法改正は、時効が5年と長くなるのに対して、労働基準法115条がそのまま残れば、労働者保護を目的とする労働基準法115条が賃金について2年と短くなり、民法の水準から引き下げられることになり、労基法の趣旨と矛盾することになってしまいます。
そのような経緯から、労働政策審議会で議論が始まったとされています。最近の新聞に、総選挙の記事が載っていました。労働基準法の改正の審議が先延ばしになるかもしれませんが、今後の議論に注目したいところです。
仮に5年になった場合、未払賃金の請求と年休消化の問題は、対応を間違えると経営者にとって経営を左右する問題となる可能性があると思われます。
2017年9月20日