「106万の壁が広がる!?」社会保険の適用拡大とは

皆さまこんにちは。障害年金サポート調布(SSC)の井上真理子です。朝晩は涼しい日が増えてきましたね。窓から鈴虫の音色が聞こえてくると、秋の気配が近づいてきたことを実感しつつ、今年もあと3カ月か、、、と少し寂しさも感じています。

さて、10月1日より社会保険の適用対象が拡大されました。ニュースなどで「106万の壁が拡大!生活を直撃!」なんて見出しで報道されているので、すでにご存じの方も多いかと思います。
今回は改めて、社会保険とは何か?適用されるとどうなるのか?をお伝えしていきたいと思います。

◆「社会保険」とは?
社会保険とは、国が生存権保障のために実施する政策(これを社会保障といいます)のうちの1つで、万が一に備えてあらかじめみんなで保険料を拠出し、万が一のときに給付を受ける制度のことをいいます。
社会保険は、労災保険・雇用保険・健康保険・介護保険・年金の5つから成り立っていますが、今回適用が拡大されるのは「健康保険・介護保険・年金」の3つです。この3つは、その人の状況に応じて〔①勤務先の会社で加入、②家族の扶養として加入、③市区町村で加入〕のいずれかの方法で加入しなければなりません。この3つの方法のうち、〔①勤務先の会社で加入〕の対象が今回拡大されます。

◆〔①勤務先の会社で加入〕と②③との違い
〔①勤務先の会社で加入〕すると、健康保険と厚生年金保険の被保険者(=加入者)となります。
健康保険については、医療費の自己負担が原則3割なのは②③と同じですが、〔①勤務先の会社で加入〕では、病気で働けないときや産前産後で働けないときに給与の約2/3の給付が受けられます。一方、②③で加入した場合はこのような給付はありません。
また厚生年金に加入すると、国民年金(いわゆる1階の部分)に加え、厚生年金(いわゆる2階の部分)の加算があります。一方、②③では国民年金のみの加入となり厚生年金の上乗せがつかないため、受給額が①よりも低額になります。

〔②家族の扶養として加入〕は保険料が発生しませんが、〔①勤務先の会社で加入、③市区町村で加入〕では収入に応じて個々人ごとに保険料が決定されます。①は決定された保険料の半分を会社が負担してくれますが、③は全額自分で負担しなければならないため、一般的に③よりも①の方が自己負担は少なくなることが多いです。

給付は〔①勤務先の会社で加入〕が最も手厚く、保険料の負担は〔②家族の扶養として加入〕が最も少なくなるため、「どちらがお得か」を一概に判断することは難しいです。

◆〔①勤務先の会社で加入〕になる人はどんな人?
勤務先の会社で社会保険に加入する人は、正社員のようにフルタイムで勤務する人と、正社員等の勤務時間の3/4以上働くパート・アルバイトさんです。例えば、正社員の勤務時間が1日8時間、週5日(週の労働時間が40時間)の会社の場合、1日7時間、週5日(週の労働時間が35時間)勤務するパートさんは、労働時間が40時間の3/4以上になるので会社で社会保険に加入することになります。

また、上記に加え、従業員が500人を超える一部の大企業では、一定の要件(※)を満たした人は週20時間以上の勤務でも社会保険に加入となります。

(※)一定の要件
①週の所定労働時間が20時間以上であること
②雇用期間が1年以上見込まれること
③賃金の月額が8.8万円以上であること
④学生でないこと

◆106万の壁ってどういうこと?
前述のとおり、配偶者の扶養に入ると(つまり②の方法で社会保険に加入した場合)保険料は発生しませんでした。扶養に入るには年間の収入が130万円未満であることが必要なので、1カ月あたり約108,000円以下の収入であれば就労していても扶養に入ることができます。

例えば、正社員等の勤務時間が週40時間の会社で、1日5時間、週4日勤務、時給1,072円でパート勤務している場合、フルタイムの3/4未満の勤務時間なので会社で社会保険に加入する対象にならず、また月の収入は約92,192円(年間約110万円)なので配偶者の扶養に入ることができます。

しかし、従業員が500人を超える一部の大企業に勤めると、週の勤務時間が20時間以上かつ月の給与が8.8万円以上の要件を満たすため、会社で社会保険に加入する対象となり、保険料の負担が発生します。

年収106万円以上(給与8.8万円×12カ月=105.6万円)になると保険料の負担が発生することから、「106万の壁」と呼ばれています。

◆106万の壁の拡大とは?
今までは、従業員数が500人を超える一部の大企業に勤める人だけが106万の壁の対象でした。(つまり、500人以下の中小企業に勤める人には106万の壁はありませんでした)。
10/1からは、この「従業員数500人を超える会社」という要件が「従業員数100人を超える会社」に改定されます。例えば、従業員数300人の会社に勤めていた人は10/1以降新たに106万の壁の対象になるということです。

また、「雇用期間が1年以上見込まれること」という要件が「2カ月を超える雇用の見込みがあること」に改定されます。例えば、3カ月の雇用契約を結んだ場合、今までは1年以上見込まれないとして加入対象とならなかった人も、10/1以降は2カ月を超える雇用の見込みがあることに該当することになります。

対象の会社が増え、また対象となる労働条件も広がるため、ニュースなどでは「106万の壁が拡大!」と報じられています。また、10/1より最低賃金が改定されるため、時給がアップしたことにより、働き方を変えなくても月の給与が8.8万円以上になるケースも想定されます。

◆106万の壁は悪いことなの?
単純に、保険料の負担が増えるという側面のみで判断すると、手取りが減ってしまうので嫌だな、と感じられると思います。しかし、社会保険に加入すると保険料の負担も発生しますが、万が一のときの給付も手厚くなるため、一概に106万の壁は悪だ、とも言いきれません。

障害年金について少し詳しく触れてみると、以下のように厚生年金加入中の障害は、国民年金よりも手厚い給付が受けられます。

・障害等級1・2級の場合、国民年金部分に加え厚生年金の上乗せ給付がつく
・国民年金ではカバーされない、障害等級3級やそれより軽い障害にも給付がある
・加入期間が短くても一定(300月分)の給付がもらえる

◆まとめ
社会保険の適用拡大は、負担が増える一方給付も増えるため、私たちの生活に大きく影響します。この機会に生活スタイルや将来設計に基づいて働き方を見直してみてはいかがでしょうか。

なお、私たち障害年金サポート調布は、月に1回調布市社会福祉協議会のご協力を得て無料の障害年金相談会を開催、”人生のもしも”を支える障害年金の制度をわかりやすく説明し、必要とする方にお届けするお手伝いをしています。こちらもぜひご活用ください。

コラム

« »