障害年金と就労について

みなさまこんにちは。
障害年金サポート調布の倉本貴行です。

今回は「障害年金と就労」について考えてみます。この問題はみなさまからよく質問を受け、このコラムでも過去に何回か取り上げられています(平成25年6月26日26年5月28日11月5日27年8月12日12月2日)。
特に知的障害や発達障害等の精神疾患を患っている方からの質問を受ける機会が多いです。
我々社会保険労務士の業界?でもよく話題になります。
曰く「障害年金をもらっているが、今度更新時期が来る。もしその時点で働いていたら年金は止まるのか?」「現在働いているが今度障害年金を請求しようと思う。働いていたら障害年金はもらえないと聞いたが本当か?」「障害年金の請求をしたいが働いていたら年金はもらえないと聞いたので働く時間を減らそうと思うがどうか?」等々です。

法律にはどのように書いてあるのでしょうか。厚生年金保険法や国民年金法に「支給停止」の条文が置かれていますが、それぞれの法律には、1.労働基準法の規定による障害給付を受ける場合は6年間支給停止される。2.受給権者が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったときは支給が停止される、と規定されています。
また、20歳前の国民年金の被保険者になる前のいわゆる「20歳前障害」に該当する場合は、1.恩給法や労働者災害補償保険法等の規定による給付を受ける場合、2.刑事施設や少年院等の一定の施設に収容されている場合、3.日本国内に住所を有しない場合、に支給停止される旨の規定があります。
いずれにしても「就労していれば支給停止される」との規定は置かれていません。では、なぜ「就労すれば支給停止になるのでは?」という話になるのでしょうか。障害年金の支給停止の要件は「障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなったとき」とややこしい表現ですが、では「障害等級に該当する程度」とはどの程度か?ということが問題になります。
法律に障害等級に該当する程度を一覧表にしたものが置かれているのですが、これはかなり抽象的な表現になっています。そこで、法律ではないのですが、障害年金についてより具体的に記述された「障害認定基準」というものが用意されており、その中にいろいろな障害についての説明があり、どのような状態がどの程度の障害等級に該当するのかという説明があります。例えば知的障害については、1級は「知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの」とあり、2級は「知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの」。3級は「知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの」となっています。
また、発達障害については、1級は「発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの」とあり、2級は「発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの」。3級は「発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限をうけるもの」となっています。
いずれも「不就労であること」が支給の要件にはなっていません。

また、障害認定基準には就労について次のような説明があります。「就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」
要するに、「就労」という言葉やイメージに捕らわれずに、その実態を補足しようということです。医師に診断書の作成を依頼する際には上記に書かれているように就労の実態をキチンと伝えることが重要です。場合によっては就労先に就労実態を記述してもらい、それを医師に提出することも考えましょう。

とはいっても現実として就労しているケースで障害年金が不支給になったり、支給停止になる事例をよく聞きます。
不明な点、よく分からないことがあればどうぞ我々専門家にご相談ください。月に1回の調布市社会福祉協議会での無料相談会もご利用ください。
お待ちしております。

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