『社会保険審査会』について

月日の経つのは早いもので、今年もあと2ケ月足らずとなりました。皆さんお元気でしょうか、障害年金サポート調布の福間です。

今回は、最近厚生労働省から発表のあった『社会保険審査会の平成28年度の審査取扱状況』についての数値(国民年金)について、書いてみたいと思います。

まず、『不服申立て』の制度についてです。この制度は、健康保険、船員保険、厚生年金保険、国民年金等の行政処分に関して、不服があるときは審査請求できるものです。不服申立ては、原則として二審制がとられており、まず社会保険審査官に審査請求をし、審査官の決定に不服がある場合は社会保険審査会に再審査請求することができる。一般的な行政処分に不服がある場合は行政不服審査法の適用を受けるが、社会保険の場合は制度が複雑かつ専門的であるとの理由から、別個の審査請求制度によって審査が行われている。

第一審:
社会保険審査官に審査請求を行い、審査官は審理の結果を決定書で本人に通知する
社会保険審査官は、厚生労働省職員のうちから、厚生労働大臣が任命 定員103名
地方厚生局8か所に配置されており、東京都は関東信越厚生局が管轄

第二審:
審査官の決定に不服がある場合は社会保険審査会に再審査請求を行う
審査会委員、参与、請求人、保険者(原処分権者)の出席する公開審理、合議を経て、審理結果を本人に通知
社会保険審査会は、厚生労働省に置かれている
社会保険審査会は、委員長及び委員5名の計6名によって構成され、任期は3年間
国会の同意を得て、厚生労働大臣が任命
現在の構成委員は、ホームページに具体的氏名が載っている
裁判官出身者2名(東京高等裁判所総括判事経験者)、医師2名、保険会社出身者1名、
社会保険労務士1名、裁判官出身者が審査長となって、4つの部会を構成し、合議制
公開審理の際には、当事者以外に参与制度が設けられている
現在18名の社会保険審査会参与が厚生労働大臣によって指名されている
(被保険者代表8名、事業主代表6名、国民年金代表4名)

ここからが、平成28年度の社会保険審査会の審査請求裁決等の状況です。
国民年金に限って数値を見てみたいと思います。
裁決合計件数は、848件(内、容認35件:4.1%、棄却741件:87.4%、却下72件:8.5%)
認められるのは4%程度と厳しいのがわかります。
しかし、このデータには『取下げ件数』も載っています。取下げ件数は、143件でそのうち原処分変更に伴うものの数値が、117件となっています。容認件数の3倍以上、100件を超す原処分変更が行われています。
裁決合計数値と原処分変更に伴う取下げ件数:965件のうち、容認件数と原処分変更に伴う取下げ件数の割合は、15.8%となります。
国民年金の請求の受付状況を見ると、国民年金の再審査請求の90%は障害年金の請求に関する申請です。これらの数値は、障害基礎年金の状況と考えることができると思います。

これに対して、平成28年度関東信越厚生局の『審査請求取扱状況』です。
同じく国民年金の決定件数を見てみたいと思います。
決定件数合計は、1,279件(容認32件:2.5%、棄却1,189件:93%、却下58件:4.5%)
取下げ件数は35件です。取下げ件数は少ないといえるのではないでしょうか。原処分変更に伴う取下げについては言及されていませんが、ほとんどないように思います。

以上の数値から、不服申立てを行う場合、正当な理由があると確信するならば、審査請求で棄却されても、へこたれず、再審査請求まで進んでみる価値はあるように思います。

なお、原処分変更についての具体的事例については、当障害年金サポート調布代表・倉本先生が、当コラム(2015年6月10日)に書いていらっしゃいます。こちらも併せてご覧いただければ幸甚です。

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