併合認定

みなさまこんにちは。
障害年金サポート調布の倉本貴行です。

今回ご紹介する事例はひとつの病気によって障害が複数出現した事例です。
原因傷病は「脳出血」、出現した障害は1.高次脳機能障害、2.言語機能障害、3.肢体機能障害の3つです。
障害年金の請求はまず初診日を特定するところから始まります。
本事例の初診日は平成28年の冬の日でした。
救急搬送され、脳出血の診断がされ、即日手術が行われました。
その後一定期間のリハビリを経て、現在は比較的落ち着いておられますが、定期的に通院されています。

障害年金を請求するには、診断書が必要になります。
本事例の場合は3つの障害(傷病ではなく障害です)がありますので、それぞれ
1.高次脳機能障害…精神用
2.言語機能障害…言語用
3.肢体機能障害…肢体用
と3枚の診断書が必要になります。
幸い同じ病院のリハビリ科にかかっていたので同じ先生に書いていただきました。
リハビリ科の医師が精神用の診断書が作成できるのか、という疑問があるかも知れませんが、精神用の診断書は「傷病の性質上、原則、精神科を標榜する医師に記入していただくことになっています。ただし、てんかん、…(中略)高次脳機能障害など診療科が多岐に分かれている疾患について、小児科…(中略)リハビリテーション科…(後略)などを専門とする医師が主治医になっている場合、これらの科の医師であっても、精神・神経障害の診断又は治療に従事している医師であれば記入可能です。」となっており本件はこれに該当しました。
なお、障害年金の請求書は1枚です。1枚の請求書に請求傷病名を3つ書けば大丈夫です。

そこで本件はどのように認定されたかというと「併合認定」という手法で認定されました。
これは本コラムでもときどき出てくる「障害認定基準」に詳しく書かれていますので、興味のある方は是非日本年金機構のHPをご覧ください。

まず、「併合判定参考表」という表で本事例の夫々の障害の状態に該当する番号を求めます。次のようになります。
 1.高次脳機能障害…4号-8 2.言語機能障害…6号-2 3.肢体機能障害…4号-7
次いで上で求めた番号の最下位(6号-2)及びその直近位(4号-7及び4号-8)について、「併合認定表」によって併合番号を求めて、以下順次、その求めた併合番号と残りの内最下位のものとの組合せにより、最終の併合番号を求め認定します。具体的には次のとおりです。
 2.言語機能障害…6号-2(最下位)+3.肢体機能障害…4号-7(直近位)=2号
 2号+1.高次脳機能障害…4号-8(次の直近位)=1号…最終の併合番号
併合番号1号の障害の程度は「1級」となります。
したがって今回の事案は障害年金の1級となりました。

なかなか分かりにくいのですが、要は本人が現在抱えている複数の障害を「足し算」「合わせ技」によって認定するという手法です。

病気やケガで障害を負うことは誰でもがあることです。年金制度の中にあって「障害年金」は他の「老齢年金」「遺族年金」に比べて複雑になっています。誰もが請求手続きをすることができる制度設計にはなっていますが、現実問題として「障害年金」は保険者(厚生労働省)の「認定」という判断が行われますので、どうしてもある程度の幅、範囲があります。
そのため所謂ボーダーラインというのが出てきます。少しでも不明な点があれば、年金事務所や市役所、我々専門家へ相談されることをお勧めいたします。

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