複数就業者の労災保険給付に関する検討

こんにちは、『障害年金サポート調布』の服部純奈です。
2020年、1月目が終了しつつあります。この調子で、今年1年間もあっという間に過ぎ去りそうでヒヤヒヤしています。東京オリンピック、パラリンピックもありますので、1日1日を楽しく、大切に過ごせたら素敵ですね。

さて、本日は労災について取り上げたいと思います。

最近は、以前に比べ兼業・副業を推進する動きが出てきました。政府も、「働き方改革」にて副業を推進しています。

従来の日本では、就業規則等で副業を禁止していた企業も多く、今でも8割の企業で副業が禁止されているという調査結果もあります。企業が副業を禁止する理由は、自社の機密保持や競合他社との関係、副業することによって業務に支障が出る健康状態になる可能性がある…等、様々かと思います。
一方で、従業員のキャリアアップや、兼業・副業によって得られた体験で本業にイノベーションをもたらす相乗効果を狙って、兼業・副業を容認する企業も少しずつ増えています。

そこで、複数社で業務に従事した場合の労災はどうなるのか?厚生労働省の労働政策審議会において検討が進められているとのことですので、その内容をご紹介します。

まず、労災はみなさんもよくご存知かと思いますが、「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」や、「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」に対して保険給付がされます。

「業務上疾病」とは、業務と相当因果関係にある疾病のことを指し、これらは厚生労働省令で列挙されているのですが、その最後に「その他業務に起因することの明らかな疾病」と規定されています。

例えば脳血管疾患や心臓疾患が起きた場合に、それが長期間にわたる長時間労働や、業務による心理的負荷を原因とする精神疾患と相当因果関係が認められた場合に、労災と認定され給付がされます。

《今まで》
今まではその認定の基礎となる負荷について、複数の事業所に勤務していた場合は、それぞれの就業先での負荷で認定していました。

《今後に向けて検討中》
それを、それぞれの就業先の負荷のみでは業務と疾病等の間に因果関係が見られないものの、総合・合算して評価し、因果関係が認められる場合も、新たに労災給付を行うべきではないかという検討に入っているとのことです。

認定基準も、現行の認定基準の枠組みで対応しつつ、脳・心臓疾患、精神障害等の認定基準については専門家の意見を聴取予定。

また、それぞれの就業先の負荷のみでは業務と疾病等の因果関係が見られない場合は、いずれの就業先も災害補償責任を負わない。そして、一の就業先の業務上の負荷のみで労災認定をできる場合は、他方の就業先には災害補償責任はないこととする、等の方向性で検討されているそうです。

兼業・副業が進んでいる中で、労災の規定も対応できるように変わりつつあります。
今まで、一の就業先の負荷では認定されなかったが、総合・合算することで認定されるケースも出てくるかと思います。
この後の進捗も注目したいと思います。

コラム

« »