年金制度改正の内容について

みなさん、お元気ですか。ご無沙汰しております、福間です。
8か月ぶりにまた投稿することになりました。
今後は年に2~3回投稿することになると思います。

今回は、年金制度改革の中で、来年以降に施行日を迎える私たちに影響が大きいと思われる項目(Ⅰ~Ⅲ)を中心にまとめてみたいと思います。

昨年春のコロナ禍の中で、年金制度改正法(令和2年法律第40号)が6月5日に公布されました。
この年金法改正の目的は、『働き方の多様化が進むなか年金制度においても多様な就労に対応すること、より長く働くことへの支援や長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ること等である』とされています。
それでは主な項目です。

Ⅰ 被用者保険の適用拡大
【厚生年金保険法、健康保険法、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一 部を改正する法律(平成24年改正法)、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法】
現在、正社員や法人の代表者、役員等は被保険者となります。パートタイマー、アルバイト等でも、1週間の所定 労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上 である者は、被保険者となります。
また、正社員の4分の3未満であっても、①週の所定労働時間が20時間以上、②勤務期間が1年以上見 込まれること、③月額賃金が8.8万円以上、④学生以外、⑤従業員501人以上の企業に勤務していることの5つの要件を全て満たす者は、被保険者になります。
今回の改正では、①、③、④は現状維持とされ、②、⑤が改正されます。
②フルタイム等の被保険者と同様の2か月超の要件とする
⑤短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、
段階的に引き下げる
現行500人超→100人超 2022年10月から 新たに45万人が適用 
100人超→50人超    2024年10月から 新たに65万人が適用
また、非適用業種の見直し(2022年10月施行)により5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業が追加されます。

Ⅱ 在職中の年金受給の在り方の見直し 【厚生年金保険法】
主な項目は次の2点です。1. 65歳以上の在職定時改定の導入、 2. 60~65歳の支給停止の基準の引き上げ。施行日は、令和4年(2022年)年4月予定です。
1.65歳以上の在職定時改定の導入
現在、老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合には、資格喪失時(退職時または70歳到達時)に受給権取得後の厚生年金被保険者期間を加えて老齢厚生年金の額が改定されています(退職時改定)。
これが今回の改正で、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月分から改定し、それまでに収めて保険料を年金額に反映する制度に変更となります。
この制度改定により、就労を継続したことの効果が退職を待たずに早期に年金額に反映されることになり、年金を受給しながら働く在職受給者の経済基盤の充実が図られることになりました。
2.60~65歳の支給停止の基準の引き上げ
60~65歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度(低在老)について、年金の支給が停止される基準が現行の賃金と年金月額の合計額28万円から47万円(令和2年度額)に緩和され、賃金と年金月額の合計額が28万円から47万円の方は年金額の支給停止がされなくなります。
なお、65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)については、現行の基準は47万円で変更はありません。
  
Ⅲ 受給開始時期の選択肢の拡大 【国民年金法、厚生年金保険法等】
現在、公的年金の受給開始時期は、原則として個人が60歳から70歳の間で自由に選ぶことができることになっています。
65歳より早く受給開始した場合(繰上げ受給):年金額は減額(1月当り▲0.5%)
65歳より後に受給開始した場合(繰下げ受給):年金額は増額(1月当り+0.7%)
この制度を高齢期の就労の拡大等を踏まえ、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるよう、繰下げ制度についてより柔軟で使いやすいものとするとの趣旨で改定されるものです。
具体的な見直し内容は次の通りです。
1.繰下げ受給の上限年齢の引上げ(令和4年4月施行)
①現行70歳の繰下げ受給の上限年齢を75歳に引上げ
(令和4年4月1日時点で70歳未満の者について適用)
受給開始時期が60歳から75歳の間で選択が可能となって選択の幅が広がります。
②繰上げ減額率は1月当り▲0.4%(最大▲24%)となり減額となります。
③上限年齢(現行70歳)以降に請求する場合の上限年齢での繰下げ制度についても、
連動して75歳に見直しとする。(75歳以降に繰下げ申出を行った場合、75歳に繰下げ
申出があったものとして年金を支給することとする)
2.70歳以降に請求する場合の5年前時点での繰下げ制度の新設(令和5年4月施行)
70歳以降80歳未満の間に請求し、かつ請求時点における繰下げ受給を選択しない場合(5年分を一括請求)に、年金額の算定にあたっては5年前に繰下げ申出があったものとして年金を支給する。

Ⅳ 確定拠出年金の加入可能要件の見直し等
【確定拠出年金法、確定給付企業年金法、独立行政法人農業者年金基金法等】

Ⅴ その他
【国民年金法、厚生年金保険法、年金生活者支援給付金の支給に関する法律、児童扶養手当法等】
①国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え
②未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加
③短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(具体の年数は政令で規定)
④年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し
⑤児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直し 等

以上です。

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