診断書が取得できなくても認められた事例
こんにちは。障害年金サポート調布の岡部健史です。
本日は、先天性の聴覚障害(感音性難聴)で認められたAさんの事例をお話いたします。
Aさんは、23歳であった平成28年5月に、ご自身で障害基礎年金を請求(障害認定日請求)されましたが、20歳(障害認定日)時点では認められず、請求日で1級と認定されました。
したがって、1級の障害基礎年金を受給する権利は平成28年5月に発生しました。しかし症状は生まれたときからほとんど変わっておらず、20歳(障害認定日)時点からの支給(3年遡及)を求めるために不服申立を行おうと考えておられ、私にご依頼いただきました。
Aさんは、20歳時点でろう学校に通われていたため、ろう学校での20歳時点の聴力測定の結果がありました。ご自身で請求されたときもその聴力測定の結果を添付していたのですが、年金機構は「20歳時点の診断書の添付がなく、障害の状態が確認できないため」として却下の処分を下しました。
すなわち、年金機構は、障害年金の認定には診断書が必要であり、他のものでは認めないということを言っていることになります。
この点にフォーカスして、不服申立では診断書のみに限らず聴力測定の結果で認めるよう申し立てることになりました。
具体的には次のような点について主張しました。
1.できる限りの聴力検査の結果を集め、長期にわたり障害の状態が存在して変わっていないこと。
2.一般的に、先天性の感音性難聴は不可逆であるとされ、現在の医学では改善が難しく治療の効果が期待できないため、Aさんは通院する必要がなかったといえること。したがって、診断書が添付できない点についてAさんに責任はないこと。
3.合理的な資料によって障害の状態が証明できれば、診断書でなくても採用すべきで、診断書に限定されなければならない理由はないこと。
その他判例なども用いて主張を補強しました。
平成28年10月に不服申立1審目の審査請求を行いましたが、平成29年1月、社会保険審査官は棄却と判断しました。理由は年金機構と同じく、「20歳時点の診断書の提出がないため」というものでした。その他のこちらの主張に対しては一切回答がなかったため、当然に納得できるものではなく、平成29年2月に不服申立2審目の再審査請求を行いました。
結果は、平成29年10月の公開審理予定日の10日ほど前に厚生労働省より処分変更の旨連絡がありました。これは、保険者が当初の処分を変更したことを意味します。すなわち、こちらの言い分が認められ、20歳まで遡及して1級の障害基礎年金が支給されることになったということです。
原則として診断書は必要ですが、この事例のように診断書が取得できなくても認められることもありますので、あきらめないことが大切です。
精神の障害などのように数値で障害の程度が表せない傷病については、難易度は上がりますし必ずしも認められる保証はありませんが、あきらめないことが今回の結果につながったのだと思います。さらに、不服申立は必ず再審査請求まで行うことが重要です。審査請求で棄却されてもあきらめないでください。
ご不明な点は是非専門家にご相談ください。
2017年11月22日