神経症と人格障害について
みなさんこんにちは。
障害年金サポート調布の倉本貴行です。
先日、ある方から次のように尋ねられました。
「私は担当医から『人格障害』と言われ、障害年金は受給できないと言われました。また、私の友人は『パニック障害』と言われ、友人も障害年金は受給できないと言われたそうです。「精神障害」の中に、『人格障害』『神経症』『精神病』等の区分があるようですがどのような関係になっているのですか。」
障害年金の請求に際して、障害の程度を認定するための具体的な基準として「障害認定基準」というものがあり、これを基にして障害の等級が決められています。
認定基準の第8節/精神の障害の個所に、次
1、人格障害は、原則として認定の対象とならない。
2、神経症にあっては、その症状が長期間継続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱う。
という記載があり、担当医はこれを根拠にお話しされたものと思われます。
これだけ見ると分かりにくいですよね。
笠原嘉(かさはらよみし)さんという精神科医が書いた「精神病」(岩波新書2012年2月6日第19刷)の中に分かりやすい解説がありますので、それをご紹介します。なお、原文そのままではありませんのでその点お含み置き願います。
まず、精神の障害をその本では「心の不調」という言葉で表しています。
そしてその「心の不調」を二つの系列に分けています。一つは「病気」の系列であり、もう一つは「パーソナリティの歪み」(この本では「人格障害」という言葉ではなく「パーソナリティの歪み」という言葉を使用しています。)です。
「病気」とは、健康の範囲にあった人が「ある時点から」「症状として」知られる一定の変化を示す場合で、軽重はあっても、今までになかった心身の症状が出現し、病気の間は本来のその人とは多少とも異質な状態が出現し、原則として治癒あるいは悪化の方向へ動く。そういう状態を「病気」と位置付けています。このうち健康の範囲に近い、軽いところを「神経症」状態といい、遠いところを「精神病」状態と言っています。
もう一つの「パーソナリティの歪み」のパーソナリティというのは、その人がこの社会に生きていくとき、特別に意図的でなくいつもやっている感じ方、考え方、つき合い方の「全体」をいいます。同じ「心の不調」でも、パーソナリティの歪みは「病気」の場合のようにある時点から変化が生まれるのではなく、青年期前後くらいから、いつとなく形を成してきて、以後ずっと変わることなく持続する。身体でいえば、体質のようなものを想像するのがよいでしょうと言っています。
簡単に言えば「病気」は、その人にとっていわば余分なものが「病気」として付け加わった、そういう不調であり、一方「パーソナリティの歪み」は、その人の「人となり」のなかに源泉のある不調であり、両社は本質を異にしていると言っています。
話を認定基準に戻します。
1、人格障害は原則として認定の対象とならない。→「病気」とは区別されている。
2、神経症にあっては(中略)原則として認定の対象とならない。(後略)→神経症状態が重症化すると精神病の領域に入ってくる。
何となくイメージはつかめると思いますがいかがでしょうか。
分かりにくいことがあれば、いつでもお尋ねください。
お待ちしております。
2014年8月20日