初診日の壁 ~声掛けで救える人が増える~

こんにちは、『障害年金サポート調布』の岡部健史です。
今回は、障害年金の制度周知に向けた「声掛け」の重要性についてお話しさせていただきます。

「年金」というとほとんどの方が老後にもらうものだという漠然としたイメージを持っていることと思います。ニュースなどで頻繁に放送されて問題になっているのも「老後にもらう年金」ですので、老後にもらう年金を知らないという方はほとんどいないと思います。ですが、これが「障害年金」となると全く逆になり、知っている方がほとんどいません。障害年金を扱っている者として悲しいことですが、残念ながらこれが現実です。厚生年金の方も国民年金の方も、お支払いいただいている保険料の中には障害年金の分も含まれているので、未納にされていなければ、いざという時にもらえる権利を持っているのです。

障害年金を含む社会保険は「請求主義」をとっていますので、ご自分から請求しないともらえません。従いまして、知らないと、いざという時や障害の状態になって本当に必要なときにせっかくお持ちの権利を行使できないということになってしまいます。現実に、知らない方は非常に多いです。現在、障害をお持ちの方は、身体、知的、精神を併せて約744万人いるといわれています。このうち障害年金をもらっている方は約238万人で、全体の約31%ほどです。障害をお持ちの方すべてがもらえるわけではありませんが、請求さえすればもらえる方で知らないために行っていない方が非常に多いです。この記事をお読みいただいているみなさまは、是非周りの方に「障害年金という制度があるらしいから、一度相談に行ってみたら」とお声掛けをお願い致します。少しでも早く必要な方のお耳に届くことで、障害年金が生活の助けになればと思います。

実際に相談を受けていると、初診から数年もしくは数十年経過してからはじめて障害年金というものを知ったとおっしゃって、いらっしゃる方も非常に多いです。障害年金をもらう上で避けて通れないのが初診日の証明です。請求するうえで最も大切であり、経過している時間が長ければ長いほど証明が困難でもあります。初診の病院の医師に証明する書類を記載してもらうのですが、カルテ等の廃棄や廃院などにより初診日の証明ができないために請求を断念される方や不支給の決定が出る方が多くいます。通常、医師はカルテを見て初診日を証明する書類を記載するのですが、医師法という法律でカルテの保存期間は最終通院日から5年間となっていますので、5年受診がない場合や転医されて5年経過した場合などはカルテが廃棄されてしまうことが非常に多いです。その結果、初診日を証明してもらえなくなってしまいます。また、障害の状態は悪化することがありますので、最初は軽かったので請求せず悪化により何年もたってから請求する方もいらっしゃいます。しかし、このような場合も請求するときにいつでもカルテがあるとは限らないのです。これが「初診日の壁」です。

では、カルテが廃棄された時など初診日が証明できない場合にはどうすればよいのでしょうか。実はこのような場合には、当時病院にかかったことが客観的に証明できる参考書類を添付することで初診日を認めてもらえる場合があります。例として、当時の診察券、病院の領収書、健康保険の給付記録、さらには当時の家計簿や日記などです。このような書類も多くの方は処分してしまい保存していることは少ないのですが、あれば障害年金の請求において大きな一歩となります。この事実も知らないがゆえに処分してしまうのです。この記事をお読みいただいた方は是非周りの方に「診察券や領収書など病院から発行されたものはとっておいた方がいいよ」とお声掛けをお願い致します。苦しんでいる方がこのような手続上の問題でもらえなくなるのを避けられるよう、少しでも多くの方に周知をお願い致します。また、請求は先になるとしても初診日の証明だけは将来を見据えて取得しておくのもひとつの手です。

我々の仕事は、ご依頼を頂ければ請求のお手伝いをし、可能な限り受給に結びつけることです。最も大変なことは、先ほどお話しさせていただいたように初診日が証明できない場合に、初診日を確定させる証拠や資料を集めてなんとか国に認めてもらうよう知恵を絞ることです。ですので「初診日の壁」にぶつかった時などは、是非社会保険労務士という専門家にご依頼することをご検討ください。報酬をいただきますが、それゆえに我々も障害年金の業務に誇りを持って最大限ご依頼者様にとって良い結果が出るようにお手伝いさせていただきます。障害年金がもらえたことで、生きる希望をお持ちになられる方もいらっしゃいます。「障害年金がもらえるようになった」と報告をいただくと、我々も本当にうれしいです。この制度の周知のため是非「お声掛け」をお願い致します。

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