令和3年5月1日より、倉本社会保険労務士の後任として、『障害年金サポート調布』の世話人に就任致しました社会保険労務士の岡部健史と申します。
『障害年金サポート調布』とは、障害年金を通じて社会貢献を行う社会保険労務士のグループであり、障害年金制度の周知を目的として前世話人の倉本社会保険労務士の呼びかけにより発足しました。
障害者地域活動支援センター ドルチェ様のご協力をいただき、毎月障害年金の相談会やセミナーを行い、令和3年の現在、活動は10年目を迎えています。
障害年金制度は複雑であり、複雑が故の難しさやわかりづらさがあると私は感じております。
そのような制度をわかりやすくお伝えすることで、障害年金を必要とする方にお届けするお手伝いをすることを有資格者としての社会的責任のひとつと考えております。
今まで積み上げてきたものをさらに大きくし、なおかつ発展できるようグループ一丸となって取り組んでいく所存です。
なお、前世話人の倉本社会保険労務士には顧問に就任していただき、引き続きご指導を賜ります。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
・顧問:倉本 貴行(社会保険労務士)
・世話人:岡部 健史(社会保険労務士)
・メンバー:竹内 潤也(社会保険労務士)、服部 純奈(社会保険労務士)、福間 善孝(社会保険労務士)、山本 薫(社会保険労務士)、井上 真理子(社会保険労務士)、本間 美穂(社会保険労務士)、豊嶋 真理(社会保険労務士)
新着情報
こんにちは、『障害年金サポート調布』の服部純奈です。
多くの方がご存知とは思いますが、いよいよ12月1日をもって、現行の健康保険証の新規交付、再交付が終了します。12月2日からは、マイナ保険証(保険証の利用登録をしたマイナンバーカードのこと)の利用を基本とする仕組みへと移行することになりました。
ただし、現在お手元にある健康保険証の使用がすぐにできなくなるわけではなく、最長で2025年12月1日までは使用できることになっています。(保険証に有効期限がある場合は、その有効期限までは原則使用可能です)
■2024年12月1日をもって:健康保険料の新規交付、再交付終了
■2025年12月1日まで:現行の健康保険証の利用が可能
【保険料の利用登録を忘れずに】
現在、現行の健康保険証で医療機関を受診されている方は、ご自身のマイナンバーカードに保険証の利用登録がされているかどうか、確認しましょう。
マイナ保険証として利用するには、必ず保険証の利用登録が必要です。
【資格情報のお知らせは紛失しない】
そろそろ順次、「資格情報のお知らせ」がお手元に届いているのではないかと思います。加入されている健康保険協会や、組合、国民健康保険等によって、形状が異なる可能性もございますが、協会けんぽに加入されいる方の場合ですと、A4サイズの紙に、カード型に切り取れる部分があるかと思います。
切り取ると、紙製のカード型になるのですが、これはマイナ保険証として利用する場合も重要なものです。
例えば、カードリーダーがない医療機関等を受診する際は、マイナンバーカードに加えて、この紙製の資格情報のお知らせの両方を提示する必要があるからです。
カードリーダーを導入している医療機関が多くなっているとは思いますが、故障している等、使用できないケースも考えられます。
ですので、この資格情報のお知らせは紛失しないよう気を付けるとともに、医療機関に行かれる際はマイナンバーカードと併せてお持ちいただくことをお勧めします。
■カードリーダーのある医療機関を受診:マイナ保険証を、カードリーダーで読み取る
■カードリーダーのない医療機関を受診:マイナ保険証+資格情報のお知らせ の両方を提示
【マイナンバーカードに健康保険証利用登録を行っていないとどうなるのか】
マイナ保険証への移行ということで、マイナ保険証のみしか使用できなくなる…ということはございません。そもそもマイナンバーカード作っていない、または健康保険証登録をしていない方もいらっしゃるかもしれません。
今後を見通すと、これを機会にマイナ保険証の利用へと切り替えることをお勧めしますが、しない場合のお話をします。
協会けんぽの場合ですが、「資格確認書」という従来の健康保険証のようなプラスチックカード型のものが発行されることになっています。(加入されている健康保険協会、団体等によって形状が異なる可能性がございます)
「資格確認書」は、従来のように医療機関を受診する際に提示する方法で使用します。
現時点で、マイナンバーカードに健康保険証の利用登録をしていない、またはマイナンバーカードを作成していない方もいらっしゃるかもしれませんが、今後、運転免許証もマイナンバーカードに統合する…という報道もございます。何枚もカードを携帯するよりは、マイナンバーカードにまとめてしまうのも便利かもしれませんね。
コラム
2024年10月30日
ご覧いただきありがとうございます。障害年金サポート調布の岡部です。
先日、私の叔父が脳梗塞を発症しました。前日までは普通に過ごしており、就寝し、朝起きたときに体が動かなかったとのことです。右半身に麻痺が残っているため現在は入院して生活しており、リハビリに専念すべくリハビリ専門の病院への転院の手続を行っているところです。リハビリで改善することを願います。
本日は、脳梗塞での障害年金の請求について考えます。
①障害基礎年金の対象となるか障害厚生年金の対象となるか
障害年金には、国民年金制度による障害基礎年金と厚生年金保険制度による障害厚生年金の2種類があり、どちらの対象となるかは初診日で判断することとなります。原則として、初診日の時点において国民年金の加入者(被保険者)は障害基礎年金の対象となりますし、厚生年金の加入者(被保険者)は障害厚生年金の対象となります。
②原則としての障害年金の請求
障害基礎年金・障害厚生年金ともに、原則として、初診日から1年6か月経過した日を「障害認定日」といい、「障害認定日」から後3か月以内の症状を診断書に記載してもらい提出することとなります。したがって、原則として、初診日から1年6か月経過日の症状で年金受給の可否が判断されるということであり、1年6か月経過していないと、障害年金の手続き自体が行えないということになります。これは、原則としてすべての傷病について当てはまります。
③脳梗塞で体に麻痺が残った場合の障害年金請求
②でご説明した通り、障害年金は、原則として初診日から1年6か月経過しないと請求手続きが行えないのですが、脳梗塞で体に麻痺が残ったような場合は、「障害認定日の特例」に該当する可能性があります。具体的には、脳梗塞(脳血管疾患)で肢体に麻痺が残った場合であって、初診日から6か月経過した日以後、医師が症状固定と認めた場合には、医師が認めた症状固定日を「障害認定日」として障害年金の請求を行うことができるというものです。
したがて、初診日から6か月経過するまでは待たないといけませんが、6か月経過した日から原則の1年6か月が経過する日までの間で、医師が症状固定と認めれば、症状固定日時点の診断書を記載してもらうことで、1年6か月の経過を待たずに請求手続きが可能となるということです。ただし、日本年金機構や共済組合等の判断によって特例の障害認定日が認められないこともございます。認められた場合は、原則よりも早く年金がもらえることとなりますので、有利な特例となります。上記は脳血管疾患の肢体麻痺での例ですが、障害認定日の特例はいくつかあり、それぞれ条件が異なりますので、ご興味ある方は専門家等へご相談ください。
④脳梗塞で高次脳機能障害になった場合の障害年金請求
脳梗塞で高次脳機能障害になった場合ももちろん障害年金の請求手続きは行えます。しかし、肢体の麻痺のように「障害認定日の特例」には該当しませんので、高次脳機能障害の場合は、初診日から1年6か月経過しないと請求手続きを行うことができません。
⑤脳梗塞で肢体の麻痺と高次脳機能障害の両方が発生した場合の障害年金請求
脳梗塞で肢体の麻痺と高次脳機能障害の両方が発生した場合は、請求手続きが複雑になり、次の(ア)又は(イ)のようになります。
(ア)肢体麻痺の症状固定がない場合
初診日から1年6か月経過した日の症状をもとに、肢体の診断書・高次脳機能障害による精神の診断書を取得して請求手続きを行います。
(イ)肢体麻痺の症状固定がある場合
③で説明した通り、障害認定日の特例に該当する可能性があります。しかし、高次脳機能障害に特例は適用されませんので、まず肢体麻痺の症状固定日の症状をもとに肢体の診断書を取得して請求手続きを行います。
次に、高次脳機能障害の症状をもとに精神の診断書を取得して「額改定請求」を行います。「額改定請求」とは、等級をあげてもらうことを求める請求手続きです。肢体麻痺と高次脳機能障害は原因を同じくするひとつの傷病として取り扱いますので、「額改定請求」という方法をとります。
額改定請求にはひとつ重要な注意点があり、原則として厚生労働大臣の診査から1年経過しないと行うことができません。例として、初診日から8か月後に医師から症状固定の判断が得られ、肢体の麻痺で請求手続きを行って(厚生労働大臣の診査の結果)年金が認められた場合、そこから1年経過しないと高次脳機能障害による額改定請求は行えないということになります。
ただし、肢体の麻痺で1級の障害年金が認められた場合は、それより上位の等級はありませんので、額改定請求を行う必要はありません。
年金の総受給額が異なることもある非常に難しい判断が必要となりますので、このような場合は、是非専門家にご相談ください。
⑥初診日要件について
私の叔父は、脳梗塞により右半身が麻痺している状態ですので、症状的には障害等級1級に該当する程度と思われますが、残念ながら障害年金の対象とはなりませんでした。それは、「初診日要件」が理由となります。「初診日要件」は、次のとおりです。
(ア)障害基礎年金の場合
初診日において国民年金の被保険者であること又は20歳未満あるいは日本に住所を有する65歳未満であること
(イ)障害厚生年金の場合
初診日において厚生年金の被保険者であること
私の叔父は、発症時70歳で年金制度の被保険者でなかったため、初診日要件には該当せずに、残念ながら障害年金の対象とならないということになります。
障害年金の受給には、年齢なども関係することに注意が必要です。
叔父は65歳まで働いていたので、自由に余生を楽しむためにもリハビリで改善することを心から願っています。
以上が脳梗塞での障害年金請求に関する重要な注意点となります。
実際に障害年金が認められるためには、保険料納付要件という一定以上保険料を支払っていた条件や障害の程度が等級に該当するかといった条件、作成しなければならない書類などもございますので、詳細については是非専門家等にご相談ください。
コラム
2024年10月16日
みなさまこんにちは。
障害年金サポート調布の倉本貴行です。
今回ご紹介するのは、交通事故によって精神疾患を患った方の事例です。
一般的に精神疾患というと、それまで経験したことのない何か特別のことが身に起きて、それがきっかけで精神的不安が高じ、精神状態が不安定になり、精神病になるというイメージが強いと思います。
また、特にこれといった原因はないが、いつの間にか、知らないうちに精神症状が徐々に悪化して精神病になるということもあります。
交通事故を起こし、頭部を強く打ち、しばらく入院を余儀なくされ、退院してもどうも気分がすぐれない、気分が落ち込む、人に会いたくない等々の症状が出て、精神科を受診され、その後も複数の精神科を受診された方からのご相談でした。交通事故に遭ったのが30年ほど前、20歳前のことです。
まずは初診日を証明する必要があります。当時搬送された病院にはカルテはなく、交通事故ということで新聞社や警察、消防署等へ問い合わせましたが、記録は既にありませんでした。
たまたま、本人の父親が書いていた日記と、事故を起こした本人の車の修理を行った業者を探し出すことができ、所謂第三者証明を作成してもらい初診日の証明(疎明?)はできました。
次いで、現在の症状を医師に書いてもらうこととなります。
担当医は交通事故と現傷病(統合失調症)の間には因果関係はないという見立てをされていたのですが、障害認定基準(障害年金の認定に用いる基準集)の精神の障害欄には、症状性を含む器質性精神障害(脳や脳以外の身体の病気により精神症状が現れるもの)の項目が用意されていることから、その説明を行い最終的には診断書の備考欄に「交通事故が統合失調症の発症時期であると推測される」と書いていただくことができました。
審査の結果2級の年金が決定しました。
補足ですが、精神病には3種類の精神病があるといわれています。
① 身体に原因のある場合(今回の案件がこれに当たります)
② 心理面・環境面に原因のある場合
③ 原因不明あるいは内因性の場合
私たちは、調布市社会福祉協議会の協力を得て、月に1回無料の障害年金相談会を行っています。
障害年金について、不明な点、分からない点が少しでもあればどうぞ相談会にお越しください。お待ちしております。
コラム
2024年10月2日
障害年金サポート調布の豊嶋真理です。今回は、非常によくお問い合わせを受ける「働きながら障害年金を受け取れるか」についてお伝えしたいと思います。
始めに結論を申しあげますと、「就労=不支給」ではありません。日本年金機構は「障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金」と説明しています(出典:令和6年度版障害年金ガイド)。言い換えると、就労していても障害の原因となった病気やけがで仕事が制限されていれば障害年金が受け取ることができます。しかしながら、うつ病や発達障害などの精神疾患での障害年金の認定審査では就労の有無やその状況が認定の大きなポイントとなります。
●仕事などが制限されるとは?
障害者雇用や特例子会社で働いている場合は、会社から障害特性に合わせた合理的配慮の提供を受けているケースが多いでしょう。例えば、1日の労働時間が短く設定されている、時間外労働は行わない、休憩時間が多い(1時間に10分程度休憩がある)、仕事中は支援を随時受けている、などの対応が考えられます。これらの合理的配慮の提供がなければ、就労を継続することが難しい状況を「仕事上の制限」と呼ぶことができます。
一般就労の場合も、短時間勤務や欠席・遅刻・早退などの勤怠不良、休職などの就労上の支障があれば、一定の制限を設けないと就労は難しいと考えることができます。
●就労による日常生活への支障
仕事をしていれば、勤務日はなんとか頑張って働く方は多いでしょう。しかし、就労が日常生活へ支障をきたす場合もあります。例えば、家に帰ると疲れて何もできなかったり、休日も家事をする気力が起きず家の中が散らかったままでずっと横になっていたり、仕事外で人とコミュニケーションを取る意欲がない、などの状況が考えられます。障害の影響で日常生活に支障をきたしている場合は、就労に一定の制限を設けないと働き続けることが難しい状況と考えることができます。
働きながら障害年金を受給することは不可能ではありません。一方で、就労しているという事実だけを基にして「働ける=支障がない」と判断される可能性もゼロではありません。就労されている方は、仕事の制限と日常生活への支障の状況を障害年金請求時または更新時にしっかりと伝えることが大切です。
コラム
2024年9月18日
こんにちは。障害年金サポート調布の本間美穂です。
パラリンピック2024でも熱戦が繰り広げられていますね。選手の皆さんの情熱が伝わってきます。
今回は、軽度知的障害の障害年金請求についてご説明させていただきます。
お子様が療育手帳4度をお持ちで、障害者雇用枠で勤務できていると、ご両親も障害年金の受給は難しいのではお考えの方がいらっしゃいます。
しかし、療育手帳と障害年金の認定基準は異なります。
東京都の療育手帳の認定基準は、障害の程度により、「最重度」「重度」「中度」「軽度」の4種類に分けられます。
軽度:知能指数がおおむね51以上70以下であり、社会生活への適応に援助が必要な程度のもの
障害年金の認定基準は、知的障害の場合は、障害の程度により1級と2級があります。
そして、「知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。」とあります。
また、厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、
知能指数については、
「療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は、1級または2級の可能性を検討する。それより軽度の判定区分である場合は、不適応行動等により日常生活に著しい制限が認められる場合は、2級の可能性を検討する。」
また、就労については、
「一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば2級の可能性を検討する。」
とあります。
ガイドラインからは、療育手帳4度で、就労していても、障害年金2級を受給できる可能性があることが読み取れます。
なお、障害年金の請求に際しては、日常生活に著しい制限があることや、仕事の内容について、ご本人の状況が2級に該当する程度であることがわかる「診断書」(医師作成)や「病歴就労状況等申立書」(家族作成)の作成が必要です。
障害年金の受給は難しいかなと、請求を悩まれている場合は、ぜひ、年金事務所や市役所、社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
実際に、療育手帳4度をお持ち方で、障害年金2級に支給決定された事案は多数あります。
コラム
2024年9月4日
皆さまこんにちは。障害年金サポート調布(SSC)の井上真理子です。パリオリンピック熱かったですね!私はダンスが趣味なので徹夜でブレイキンを応援しました。ダンスは個性を大切にするスポーツなのでもっと広まってほしいなと思います!
今回は障害年金請求の入り口、“初診日が見つからないとき”についてお話ししたいと思います。
◆前提:障害年金を受給するための3つの要件
障害年金を受給するためには3つの要件を満たす必要があります。
①初診日要件
請求する傷病で初めて医師等にかかった日において年金制度の被保険者であったか(一部例外あり)
②保険料納付要件
初診日において年金保険料を一定以上納付や免除申請をしているか
③障害の程度要件
障害認定日において年金制度が定める障害等級に該当するか
日本の年金制度は保険形式で運営されているため、初診日において年金で保障される人だったのかを厳密に確認します。事故に遭った後に自動車保険に加入しても保険金がもらえないのと同じで、医師にかかった後に年金制度に加入したり保険料を納付したりしても年金で保障を受けることができません。そのため、この“初診日”がいつであったのかは医療機関の証明書を提出しなければならず、主張している初診日が適格であるか厳密に審査されます。
では、初診日がみつからないときはどうしたらよいでしょうか?
いくつかのパターンをご紹介します。
◆ケース①:初診日がわからない
お薬手帳や家族の証言、診察券などから受診の時期や順番を整理していきますが、当時の資料も記憶もなく、全く手がかりがないこともあります。その場合は、直近の医療機関から順に、「以前別の病院にかかっていたことを伝えていたか、前医からの紹介状があるか」などを問い合わせしていき、状況を整理します。
◆ケース②:初診日はわかるけど医療機関の証明がもらえない
当時のお薬手帳や日記等から初診の日付はわかるものの、医療機関がカルテを破棄していて証明がもらえないことがあります。この場合は受診歴が最も古い病院から順番に証明書を依頼し、断られたら次の病院で証明書を依頼し、、、を、初診日の証明がもらえるまで続けていきます。また、診察券、障害者手帳、お薬手帳、母子手帳等、客観的に受診していたことを証明できる資料を用意します。
◆ケース③:そうは言っても、受診歴もわからない、客観的証拠もない場合
初診当時は障害年金を受給するほど状態が悪化するとは思っていなかったから診察券等は全て捨ててしまった、何度も転医したからどの病院に行ったかも覚えていない、ということもあります。
初めて行く医療機関では発病からの経過や治療歴を伝えることが多いため、現在の医療機関から順に遡って、発病からの経過や治療歴が記録に残っていないかを確認します。おおむね5年以上前に、医師に「平成〇年〇月頃に体調に異変を感じて××病院を受診した」と陳述しており、その記録がカルテに残っていて初診日の証明書や診断書に記載してもらえれば、客観的証拠がなくても初診日が認められます。
◆番外編:初診日は見つかったけど納付要件がNG
初診日を特定して年金事務所に相談に行ったけれど納付要件がNGだった、というパターンもあります。この場合でも、ご自身で特定した初診日が誤っている可能性があり、初診日がずれることにより要件を満たせる場合があります。
初診日は『関連する症状』で医師等の診療を初めて受けた日です。つまり、別に持病をお持ちの方でも、関連する症状なら1つの傷病として扱い、関連しない症状なら別々の傷病として扱います。1つの傷病と考えた時の初診日で納付要件がNGでも、別々の傷病と考えた時の初診日では納付要件が満たせることがあります。
関連する症状がどうかの判断は非常に難しいため、何度も転医している方、複数のご病気をお持ちの方、数年間通院服薬なく元気に過ごしていた方は、一度専門家にご相談ください。
私たち障害年金サポート調布は、月に1回調布市社会福祉協議会のご協力を得て無料の障害年金相談会を開催し、状況整理のお手伝い、最適なご請求方法や進め方のアドバイスなど、障害年金を必要とする方にお届けするお手伝いをしています。ぜひご利用ください。
コラム
2024年8月21日
障害年金サポート調布の山本です。
今回は65歳以降の障害年金請求についてです。
障害状態になってしまう事態はどんな年齢でもあり得ますが、65歳を過ぎると、障害年金を請求できるのはごく限られたケースだけになります。
障害年金の3つの受給要件のひとつ、初診日の要件は、以下のようになっています。
障害基礎年金…初診日が次のいずれかの期間にあること
・国民年金加入期間
・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
障害厚生年金…厚生年金の被保険者である期間に初診日があること
(日本年金機構 障害年金ガイドより)
65歳以降に初診日がある場合、厚生年金は70歳まで加入できますので、初診日に厚生年金に加入していた場合は初診日の要件を満たすことになりますが、障害基礎年金を請求することはできません。
65歳より前に初診日がある場合は、等級に該当するタイミングが問題になります。
障害年金の受給要件のもうひとつに「障害認定日に障害等級に該当していること」がありますが、障害認定日は初診日から1年6か月経過した日(それ以前に症状が固定した場合はその日)となっています。
しかし、障害認定日には障害状態になく障害等級に該当しなかったとしても、年月の経過とともに悪化して障害の状態になることがあるため、事後重症による請求という請求方法があります。ところが、この事後重症による請求ができるのは65歳到達日の前日までとなっています。
従って、65歳前に初診日があり、請求しようとする現在65歳を過ぎている場合は、障害認定日による請求のみ行うことができるということになります。
そして、年金制度には一人一年金の原則があります。理由が違うふたつの年金を受給できる場合、どちらかを選択しなければなりません。(一部併給できるパターンもあります)
例えば65歳以降、新たに障害厚生年金の受給が決まった方は、すでに受給している老齢厚生年金+老齢基礎年金をあきらめるかどうかの選択となります。
社会保険としての年金制度は、基本的には、老齢・障害・遺族の3つの年金のいずれかで生涯の働けなくるリスクをカバーするように作られているということだと思います。
65歳を過ぎていても受給できるケースはありますので、疑問に思ったら年金事務所等で確かめていただくことをお勧めします。
コラム
2024年8月14日
皆様お元気でしょうか。障害年金サポート調布の福間です。
5年に1回の「年金の財政検証」が行われて、その結果が7月3日に発表されました。
今回の財政検証は4つのシナリオを基に、将来もらえる年金額がどう変わるかが示されました。
今後の政策変更につながるオプション試算の内容は次の通りでした。
① 被用者保険の適用の更なる拡大
② 標準報酬月額の上限引上げ
③ 基礎年金の充実・基礎年金の拠出期間の延長
④ 第3号被保険者制度の縮小・見直し等
今回の税制検証の結果において、私が注目したのは、前回の財政検証での給付水準よりも低下率の改善が見られたことです。その要因は高齢者や女性の労働参加が進んで厚生年金の水準が上がったことと積立金の運用で利益があがったこととされています。
特に厚生年金の加入者数は、前回の財政検証時と比べて400万人余り増加して、年金の状況は好転したと報道されています。
今後は、更なる厚生年金の適用を広げる制度改正で厚生年金の加入者の増加を図る制度改正が行われるようです。つまり、①『被用者保険の適用の更なる拡大』政策を中心に年金改革が推進されると考えます。
今年のこれからの議論と来年度の法律改正に注目していきたいと思います。
コラム
2024年7月26日
こんにちは、『障害年金サポート調布』の服部純奈です。
本年の6月から「定額減税」が行われています。ニュース等でお聞きになった方も多いと思います。所得税や個人の住民税が一定額減税されます。
障害年金は非課税のため元々源泉徴収とは関係ありませんが、老齢や退職が事由の年金からは所得税や住民税が源泉徴収がされているケースがあると思いますが、これらが定額減税として減税されます。
■控除される金額■
本人分としては、
所得税:30,000円
住民税:10,000円
が減税されます。(減税の対象は国内居住者となっております)
所得税に関しては、この他に扶養しているご家族がいる場合はご家族分の減税となりますが、昨年の秋頃に提出した令和6年分の公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された控除対象扶養親族(16歳以上)または扶養親族(16歳未満)で合計所得金額の見積額が48万円以下の方が対象となります。
■減税の開始時期■
・所得税:令和6年6月に受け取る年金から減税が行われ、6月に全額を減税しきれない場合は、以後全額になるまで(令和6年中に受け取る年金から)順次減税されます。
・住民税:令和6年10月に受け取る年金から減税が行われ、10月に全額を減税しきれない場合は、以後全額になるまで(令和6年中に受け取る年金から)順次減税されます。
■減税の内容がわかるもの■
年金振込通知書には、定額減税後の金額が記載されていますので、通常よりも源泉徴収額が少ないことが確認できるかと思います。
■源泉徴収票には■
令和7年1月に送付される源泉徴収票の摘要欄には、令和6年中に減税された所得税額が「源泉徴収時所得税減税控除済額00000円」と記載されることになっています。
■複数の年金を受け取っている方や給与所得がある方は■
複数の年金を受け取っている方や年金の他に給与所得がある方については、それぞれの源泉徴収税額から定額減税が行われます。
■年金から控除しきれない場合■
なお、定額減税が年金から控除しきれない場合は市区町村で行われる給付措置を受けられる場合があります。詳細はお住まいの市区町村にご確認ください。
コラム
2024年6月26日
こんにちは。障害年金サポート調布の岡部健史です。
今回は、障害基礎年金と障害厚生年金の同時請求について説明します。
障害年金は、初診日の時点で加入していた年金制度の対象となります。すなわち、初診日の時点で厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金の対象となり、それ以外の方は障害基礎年金の対象となります。したがって、どんなに厚生年金の加入期間が長い方でも、初診日の時点で厚生年金でなければ障害厚生年金の対象とはならないことになります。
「それなら障害基礎年金と障害厚生年金の同時請求なんて無理じゃないか」というお声が聞こえてきそうです。通常は障害基礎年金と障害厚生年金の同時請求という方法は行い得ないのですが、障害年金の請求において初診日がいつになるのか判断が難しいケースがあり、そのようなときに同時請求という方法を使うことができます。
すなわち、初診日がAという日付の場合は障害基礎年金の対象となるが、初診日がBという日付となるのであれば障害厚生年金の対象となるなどの場合で、AとBどちらが初診日と認められるかで結果が異なる場合です。
例えば、20歳前の年金制度未加入期間に不眠と頭痛の症状で内科受診を2回だけ行い、その後症状が落ち着き問題なく生活できていたが、30歳の厚生年金加入中にうつ病を発症して精神科を受診した場合を考えます。
この場合、不眠・頭痛とうつ病に因果関係(原因と結果の関係)があれば、これらは同一傷病と考えられ、初診日は内科を初めて受診した日となる可能性が高いといえます。
不眠・頭痛とうつ病に因果関係がなければ別の傷病ということになりますので、30歳の厚生年金加入中を初診日としてうつ病で障害厚生年金の請求ができることとなります。
通常、不眠や頭痛とうつ病は因果関係ありと判断されることが多いのですが、このケースのように不眠と頭痛での受診が1~2回のみでは、受診回数が少ないためにうつ病と因果関係があるとは判断できないと判断されるケースが筆者の経験上あります。
このような場合に、うつ病の初診日はあくまでも厚生年金加入中であるとして障害厚生年金の請求を行い、「ただし厚生年金加入中の初診日が認められない場合は20歳前の内科受診を初診日として速やかに障害基礎年金の支給を求める」とすることも可能です。この場合は、年金請求書は障害厚生年金用と障害基礎年金用のものを添付して行います。不服申立も見越して障害厚生年金にこだわるのであれば同時請求は行わないほうがよいなど、使いどころが難しい場面も多いため、このような場合は是非専門家にご相談いただければ幸いです。
コラム
2024年6月12日
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